『魔王に就職』
竜人の卵《6》
「えっと……ごめんなさい」
変な雰囲気になっちゃったので、よくわからないけど謝っておいた。
「……いや、その……大事にして頂けるようなので、安心……した」
とは言っているが、やっぱ怒らせちゃったのかな……全然目を合わせてくれない。
どうしよう、これがきっかけで戦争……とかないだろうな。
「…では、これで失礼する」
そのまま去っていこうとするセレアに、俺は焦った。わー、どうしよう、どうしよう、せっかく友好的な関係なのに、俺が壊しちゃマズイだろ!
応接間を出るセレアを追いかけ、腕を掴み引き止めた。
「あ、あの……あの、ごめんなさい、こ、これからも仲良くして下さい!」
振り返ったセレアは、目をつむり、大きく深呼吸したかと思うと、ふっとあの控えめだが爽やかな笑みを浮かべ、
「……こちらこそ、よろしく願う。そうだな……できれば近いうちに、またお会いしたい」
と、はにかみながら答えてくれた。よかった……。
「はい! ぜひまた来て下さい」
「……ではまた、魔王アズマ殿」
握手を求められたのですぐに手を差し出した。大っきい手……俺の手が子どもの手みたいに見える。握った手は温かく、さっきの卵の感触を思い出した。
・・・・
「なっ……、何で早く教えてくれなかったんだよ!」
セレアが帰って後、俺は真実を知った。
「た、卵触るのにそんなエロい意味があったなんて……!」
それじゃさっきの俺はまるで変態じゃねーか!めっちゃ触りまくったし、揚げ句の果てにほお擦りとか!!
「……だから俺は止めただろうが」
ボソッとエンダリオが呟く。
くそーっ、止めるならちゃんと止めやがれっ。
……えー、一体どういうことかというと、……
竜人族の卵は元々オスが体内に持っているもので、性行為によってメスの体内に移すのだそうだ。その時の卵の大きさは……まあ、男性器より一回り小さいくらい。で、メスのお腹で栄養を受けながらスクスク育ち、人間の赤ちゃんくらいの大きさになったら外に産み出される。その後は、両親で代わる代わる魔力を送り、この大きさまで育てる。産み出された卵には、基本的に直接触れることはせず、もし触れるとしてもそれは「あなた〜私もう1個卵が欲しいわ〜」みたいなメスの誘いでそうするだけ…らしい。オスはそれを見て、自分の性器を触られてるように感じ興奮するってわけですね。
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