『魔王に就職』
竜人の卵《4》
そうこうしている間に、竜人族が来た。窓から見ると玄関前に大人数整列しているようだが、中に入るのはセレアだけらしい。考えてみたら、上魔族の中でも力の強い(らしい)竜人族が大勢で城中に入ってきて、もし暴れでもされたら流石のナウラスでも1人では対応できない。四天王を集め、城を上げての抵抗になり、間違えたら戦争にでも成り兼ねない。
それで、今日はセレア以外の竜人たちには外で待機してもらうことになっているようだ。向こうとしては、単身乗り込むセレアに何かあれば、すぐに動けるように。まぁ、つまりあっちも護衛付ということ。
……せちがらい世の中ですなぁ。
「セレア殿。遠方から遥々ようこそお越し下さいました。どうぞこちらへ、」
ナウラスが出迎え、応接間まで連れてきた。スラッと背の高いナウラスの後ろから、更に一回り大きな人物が現れる。
丈夫そうな褐色の肌、黄金に輝く鎧に身を包み、そこから出ている手足には体毛の代わりにウロコのようなものが生えている。黒く短い頭髪の間から、山羊のような大きな角。背には広げれば身体よりも大きいであろう見事な翼が付いていた。
思ったより若いみたいだが、身体がデカイからだろうか、何という威圧感。てゆーかもう、お前が魔王でいいんじゃないの的な。……これが、竜人……セレア。
あまりの圧倒にひそかにビビってたら、エンダリオがさり気なく俺をかばうように一歩前へ出てくれて、何かちょっと感動した。
「魔王アズマ殿、お初にお目にかかる。竜人族頭領をつとめるセレアと申す。内乱のどさくさを理由に、就任の祝いの挨拶、また先代ダラス殿の急逝へのお悔やみが遅れたことを心からお詫び申し上げる」
片膝をついて深く礼をするセレア。そうしてやっと見下ろせるけど、それでもデカイな。
「セレア殿はじめまして。魔王のアズマです。……竜人族の戦の終焉とセレア殿の勝利、本当に良かったと思います。これから、お国の立て直しなどで大変でしょうが、頑張って下さいね!」
ぐっ、とガッツポーズをした俺を見て、何やってんだと言いたそうな呆れた目のエンダリオ。いや……セレアが慇懃に出てきたからこちらも丁寧に挨拶しようと思ったんだけどさ、途中からちょっと照れが入って無理だったんだよ。
「……なるほど、噂どおりの方のようだ」
それまで固い表情だったセレアが破顔した。
わぁ……何か笑顔が爽やか。てかよく見たらカッコイイんじゃん。ガタイも良いし、ナウラスとかキースとは違ったタイプのいい男だな。
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