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『魔王に就職』
竜人の卵《3》

「その……竜人族の群れがこちらに向かっているとリッゼから聞いたもので」

 城に攻める気かと思い慌てて馳せて来たのですと、エンダリオは言った。

「それは……伝達が上手くいっていなかったようだな、すまぬ。
 今日はこれから竜人族と面会の予定が入っているのだ。それで彼等は城へ向かっているのだろう」

 ナウラスのエンダリオへの態度がようやく通常に戻った。良かった。

 ところで、そう、今日はウワサの竜人族が城にやってくるのだ。十数年続いた内乱を治め、頭となったセレアという竜人を筆頭に、その戦勝軍の主だった人(竜人)たちが、先代魔王との密約で魔王軍に協力してもらったことのお礼に来るらしい。
 
「ということは、卵が……」

 期待の目をナウラスに向けるエンダリオ。
 ……次期魔王へそんなに期待されると、複雑だな、俺としては。

「そうだな。孵っているかどうかは解らないが、おそらく持って来るだろう」

 ナウラスもちょっと複雑そう。
 ナウラスの予測では、セレアの管理下に置かれているとはいえ、親のない卵は栄養や温めが充分ではなく成長が遅れるため、もう2年くらいしないと孵らないはずだった。どんなに早くてもこの1年は孵ることはないと思っていたそうだ。だから、魔王の募集も一年契約で、もし延びるようなら更新、と考えていたらしい。
 だが、セレアは思いの外、律儀な男だったようで、先代魔王への恩を返すために、渡す卵の管理に大層心を込めており、もうそろそろ孵るというところまで成長させているということだ。そのことはこの前キースもちらりと言っていたし、本当にもうすぐ生まれちゃうんだろう。

 卵が孵って次期魔王が生まれてしまえば、俺が魔王を続ける必要はないわけで。
 残った契約期間をどうするかということで、ナウラスは悩んでいるのだと思う。俺的には、雑用とかでもいいから、ここに置いてもらえれば有り難いんだけど。

「……そろそろ、着くころだな。
 エンダリオ。時間があればだが、せっかく来たついでに、アズマ様の護衛として一緒に面会に立ち会ってくれるか。
 ……アズマ様、よろしいですか?」

「……あ、はい」

 いや、俺はいいけどエンダリオは……?

「……かしこまりました」

 ……スゲー嫌そう。俺の護衛だからだ……。断られるより逆に傷つく。くぅ……エンダリオ、お兄さんは早く君のデレの部分が見たいよ……。

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あきゅろす。
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