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『魔王に就職』
魔王の世界に出張中☆(※ユキ視点)《4》
 
 そして、ボクは、ナウラスさまに魔王城へ連れていかれ、任務を命ぜられまシた。

「異界の地で、私の手足となって欲しい」

 異界からいらしたという魔王さまの世界へ単身行って、そこでナウラスさまの命令どおりに動く。
 いきなりの重要な任務に緊張だったケド、好奇心旺盛なボクは、魔王さまの世界へ行くことには内心大喜びだった。

「本来なら、私が行ってやるべき仕事だが、向こうとこちらをしばしば行き来するには私の魔力が足りない。今は月に1度、このくらいの小さな魔法陣を作るのが精々だ」

 と、地面を指す。
 見ると、ボクが丁度ぴったり収まるくらいの小さな魔法陣。

「私の代わりに、向こうへ行ってくれるか。……しばらく戻れなくなるが、」

 せっかく久しぶりに会ったナウラスさまにまた会えなくなるのは寂しいケド、仕方ない。1人で過ごすのは慣れてるし、平気。
 頷くと、ナウラスさまが少しホッと肩の力を抜いた。

「人間が多数を占め、中心となっているところだ、人型が過ごしやすいだろう」

 と、言われ、びっくりした。魔狐になってからは、時々人間に化けて遊んだりしてたボクだケド、ナウラスさまはボクが人型になるのをあまり好まなかったから。
 ボクみたいな動物が人型になるっていうのは、本当なら、長年生きてきたり厳しい修行を積んだりしてやっと身につける力らしい。たまたまボクみたいに使い魔になったりしてにわかに魔力を手に入れた若い動物が人型になるのは、自然なことじゃない、と憂い気に言われたことがあり、ナウラスさまの前ではなるべく狐の姿のままでいた。

 でも、今回はいいんだ! ナウラスさまの許可が下りたから、堂々と人型になれる。
 嬉しくて、さっそく変化して、これで良いかナウラスさまに見せる。

「……耳と尻尾は、何かで隠した方がいいな。尻尾は服で隠せばいいとして……」

 人型のボクを見て、ナウラスさまがちょっと考え込む。席を外し、手に何かを持って帰ってきた。

「私が向こうで角を隠すために使った物だ、餞別にやろう」

 と、ボクの頭に何かを乗せる。頭ごと耳がすっぽり包まれる感触に、くすぐったくて耳の辺りをゴシゴシこする。

「帽子だ。よく似合っている」

 ナウラスさまがふわりと微笑む。……わぁ、さっきよりもすごくいい笑顔。ぼうし、かゆいけど我慢してかぶっとこ。

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