『魔王に就職』
魔王様、人間。(※ドゥーガ視点)《7》
それから、何回か、大きい子どもの人間、洞窟の入り口に、1人で来た。ちょっと入って、やっぱり戻ったりして、ウロウロして、帰った。
何回目かに、泣いてた子どもの人間、引っぱって、連れてきた。
「おい、変な魔物!」
洞窟の入り口で、何か言ってる。変な魔物って、ドゥーガかな。ドゥーガ、変な魔物じゃない。ちょっと、悲しい。
「ガルシア……やっぱり怖いよ〜」
「バカ。お前、変な魔物に助けてもらったんだよ! ちゃんと礼言え!」
大きい子どもの人間、泣いてた子どもの人間の背中、バシンって、叩いた。……叩くの、痛い。かわいそう。
「ほら!」
あ、また……。大きい子どもの人間、よく叩く。怖い。
「うぅ〜……、あ、あ、ありがとうございました……?」
洞窟の奥に向かって、泣いてた子どもの人間、ペコリと頭、下げた。
隣にいた、大きい子どもの人間も、一緒に、ペコリ。
「よし! 帰るぞ!」
そして、大きい子どもの人間、泣いてた子どもの人間を、また引っぱって、帰っていった。
……ドゥーガ、やっぱり、変な魔物かもしれない。
何で、どうして、わからないのに、今、ドゥーガ、ニコニコになった。大きい子どもの人間のペコリ見て、ドゥーガ、嬉しくて、ニコニコになった。
ニコニコは、優しい。優しいは、好き。優しいは、気持ちいい。
ドゥーガ、ニコニコになった。何で、どうして。ドゥーガ、わからないのに、気持ちよくて、ニコニコ。
……ドゥーガ、大きい子どもの人間、好き。
・・・・
ドゥーガ、人間、怖い。
でも、子どもの人間は、ちょっとだけ怖くない。
大きい子どもの人間は、ニコニコの思い出だから、好き。
新しい魔王様、大きい子どもの人間だったら、嬉しいのに。
「今日から、この方が、我々の魔王様になる」
ナウラス様が、魔王様の椅子に座っている人間を、みんなに紹介する。
……新しい魔王様、大人の人間だった。
ドゥーガ、大人の人間、怖い。ちょっと、残念。
「……では、アズマ様、ご挨拶をお願いします」
新しい魔王様、小さくコクンと頷いて、椅子から立った。
右手、前に伸ばして、左から右に、真っ直ぐ、動かす。これ、魔王様の挨拶。魔王様、挨拶したら、魔物たち、みんな、ペコリする。ドゥーガたちも、ペコリ。
そのとき、新しい魔王様、みんなに向かって、ペコリした。
魔物たち、みんな、ペコリしてるから、見てない。ドゥーガたちも、見てない。だから、魔王様、ペコリしたの、誰も、わからない。……でも、ドゥーガ、岩の魔物だから、足、魔王城の床にくっついて、魔王様がペコリしたの、わかった。
「……!……」
ドゥーガ、ドキドキした。新しい魔王様、どうして、ペコリした?
挨拶終わって、みんなもペコリ終わったとき、新しい魔王様、もう、椅子に座ってた。
ドゥーガ、ドキドキした。新しい魔王様、大きい子どもの人間と、同じ。新しい魔王様、ペコリして、ドゥーガ、どうしてわからないのに、ニコニコの気持ち。
隣にいたマスカ、ドゥーガ見て、ニコニコ。
「ナウラス様信じて、よかったでしょ?」って、言ってるみたい。
……うん。ナウラス様、信じて、よかった。
今の魔王様は、人間。
ドゥーガは、人間、怖い。
だからドゥーガ、人間の魔王様、最初、嬉しくなかった。
でも、新しい魔王様、全然怖くない。
子どもの人間みたいに、いつも、楽しそう。いつも、ニコニコ。
新しい魔王様、ニコニコすると、ドゥーガもニコニコ。
嬉しい。
ニコニコは、優しい。優しいは、好き。優しいは、気持ちいい。
……ドゥーガ、人間の魔王様、好き。
<END>
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