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『魔王に就職』
魔王様、人間。(※ドゥーガ視点)《2》
 
 ……ナウラス様、人間連れてくるの、どんな人間かな。

 子どもの人間だったら、いいな。
 子どもの人間は、ちょっとだけ怖くない。ドゥーガと一緒で、怖がり。弱虫と、泣き虫も、多い。子どもの人間は、友達がたくさんいて、たくさん子どもの人間が集まって何かしているのを見るのは、楽しそうで、ニコニコで、好き。ニコニコは、優しい。ニコニコは、怖くないから、好き。

 ナウラス様、ドゥーガの住んでる洞窟の近くの人間の村から、人間連れてきたら、いいな。ドゥーガの住んでる洞窟の近くの人間の村、子どもの人間、いっぱいいる。

 ドゥーガの分領地は、他の分領地とちょっと違う。分領地の中には、村とか街がない。人間は住んでるけど、みんなバラバラ。森に隠れて、静かにひっそり暮らしている。ドゥーガは、南の森の、魔物や、動物や、静かにひっそり暮らしている人間を、分領地の外から来る侵入者から守るのが仕事。だからドゥーガの住んでる洞窟は、分領地の一番南の端っこにある。ドゥーガの住んでる洞窟の近くの人間の村は、魔王領の外にある、人間の国の中にある小さな村。

 そこから、時々、ドゥーガの洞窟に、人間の侵入者が入ってくる。

 大人の人間は、武器を持って来るから、怖い。でも、ドゥーガ、南の分領地、守らないといけない。武器を壊して、人間捕まえて、洞窟の外に連れて行く。魔法使う人間もいるから、魔法使わないように、ちょっと叩いて、眠らせてから、連れて行く。……叩いたら、多分、痛い。かわいそう。人間、いつもゴメン。

 子どもの人間は、あんまり痛そうな武器は持ってないから、ちょっとだけ怖くない。洞窟の入り口で、たくさん集まって何かしてる。いつも、「きもだめし」とか、言ってる気がする。大体は、入り口からちょっと入って、コウモリとか小魔物を見て、泣いたり逃げたりして、帰っていく。

 でも、ドゥーガのところまで来た子どもの人間、1人だけ、いた。
 結構最近。10年とちょっとくらい前。
 これ、ドゥーガの、ニコニコの、思い出。

・・・・

 その日、いつもみたいに、洞窟の前で、子どもの人間が、たくさん集まって何かしてた。
 ドゥーガ、岩の魔物だから、洞窟の岩に身体くっつけたら、洞窟のこと全部解る。その日、洞窟の前にいた人間、子どもの人間って解って、ちょっとホッとした。

そのうち、1人の子どもの人間が、泣いた。

「うそじゃないもん! 1人で入ったもん!」

「うそつき。俺たちだって1人じゃ怖くて入れないのに、泣き虫カイリが入れるわけなーいー」

 泣いてる子どもの人間、ドゥーガ、何回か見たこと、ある。よく、ここに、みんなと一緒に「きもだめし」しに来たり、この前は、「勇者の練習」って言って、そういえば、1人で来てた。
 ちょっと洞窟に入って、やっぱり泣きながら逃げちゃったけど。

 でも、1人で来てた。泣いてる子どもの人間、うそつきじゃない。

「うそつきー」
「うそつきーうそつきー」

「うそじゃないもん〜!グス、グス……」

 いっぱい泣いてる……かわいそう。
 
「じゃあ今、1人で入ってみろよー」

「えっ」

「証拠見せろよー」
「そうだそうだー」

 泣いてる子どもの人間、困ってる。多分、怖いから、もう1人で入りたくない。

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あきゅろす。
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