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『魔王に就職』
魔王に採用(※ナウラス視点)《3》
 
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 着いたそこは、魔法の代わりに機械文明の発達した世界のようだった。元の世界にも人間の住むところに似たような地域があったから、そんなに戸惑いはなかったが、やはり慣れない土地は落ち着かない。夜でもあったし、とりあえず人気のない場所に宿を求め歩き、多少繁った木々の中に無人の小さな建物を見つけたので少しの間そこを借りることにした。
 木造の古い小屋で、小ぶりな割には凝った外装だが、中はガラリとしていてもう何年も人は住んでいないという様子だった。埃っぽいが、不思議と空気は清らかなので、少し掃除をすれば充分に寝られる。
 その夜からしばらく、その小屋を拠点にし、魔王になる人間を探すことにした。

 今回探すのは仮の魔王なので、魔力の有無は関係ない。普通の人間でいい。ただ、居てくれれば。
 しかしそういった普通の人間はゴマンといる。その中からどうやって、魔王になってくれる人間を探してこちらへ連れて来るか考えながら街をブラブラしていると、ふと立ち寄った店に、『求人誌』と書かれた冊子がいくつか置いてあるのが目に入った。
 ……ちなみに、街へ出る時には角を隠したり服装も周りに合わせた感じで気を使い、相応の格好をしている。……つもりだが、やはりどこか不自然だったのだろうか、やたら周囲の視線が集まってしまい少し居心地の悪い思いをした。
 ともあれ、その求人誌とやらを手にとり見てみると、それは仕事に関する求人情報を集めて載せたものであるらしく、正に今の私にピッタリのものだった。これに仮魔王の求人を載せれば、それを見た人間の内、こちらとの契約を希望する者が向こうからやってくるという仕組みだろう。わざわざ不特定に多数の人間に声をかけながら探すより、余程効率が良い方法に思えた。
 それでその求人誌を色々調べたあと、発行元の住所を訪ね直接問い合わせ、魔王募集の記事を載せてもらうことになった。

 その求人誌を扱っている人々は女性が多かったが、本来有料である記事の掲載を無償で引き受けてくれたり、記事の内容について色々相談にのってくれたり、私が応募者と連絡をとる手段がないと解ると中継になることを申し出てくれたり、本当に親切にしてもらった。きちんと礼をしたかったので彼女等にそのことを伝えると、何だかよく解らないが「しゃめ」というものを取らせてくれということだったので、見たところ特に害はなさそうだし、好きにさせた。

 面接の会場なども彼女等に設定してもらい、私はそこに待機しているだけで、彼女等が連れてきた応募者と会うことができた。求人誌に記事を載せてから3日間で10人程の人間がそこに来てくれ、魔王探しは案外簡単にいくかもしれないと、少し安堵。各応募者それなりに個性のある人間で、面接は中々楽しいものだった。

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