『魔王に就職』
先代魔王の命日《1》
だんだん、朝が早くなっている。魔王の起床は決まった時間ではなく、日の出に合わせるので、最近ちょっと夜の睡眠時間が短くなり起床後も油断すると眠い。
朝礼中、あくびをこらえるのに必死。さすがに皆が注目しているこの時に、トップが大口開けてあくびはマズイだろ。司会係、早く終わらせてくれないかな。
「本日昼までナウラス様はギノン谷へお出かけになる。城の警備を強化モードに切り替えるので、各フロア気を引き締めて業務にあたるように。……以上」
あ、やっと終わった。
玉座を立って退場し、皆が見えなくなってから、思いきりあくびする。
「寝不足ですか、アズマ様」
最上階へ戻る階段を上りながら、ナウラスが後ろから話しかけてきた。
「う〜ん、というよりは、昼寝し過ぎて夜が遅いからかな」
「そうですか。体調が悪いのでないなら良いのですが。
では、私が外出している間もお昼寝はほどほどに、ですね」
そっか、ナウラス出かけるんだっけ。じゃあ午前中暇だな〜。
……絶対寝そう。
「ナウラス、ギノン谷ってどんなとこ?」
「……そうですね、草木が生えず殺風景であまり生き物は近寄りません」
「……怖いとこ?」
「まぁ、怖いというよりは寂しいところ、ですね。でもそこに住んでいる魔物は大人しいのでそんなに危険なことはないし、見ようによっては、静かでいいところですよ」
「ふぅん、……ね、俺もついてったら、ダメ? 邪魔なカンジ?」
ナウラスがそこに何しに行くのか解らないけど、きっとこのまま城に居たら暇で寝てしまいそうなので。
ナウラスは一瞬、はっと何か思いついたような顔をして、立ち止まった。
「……そうですね、行きますか、アズマ様も」
ん、ナウラス、真剣な表情。……えーと、何かあまりお気楽ではないカンジかな?
「実は今日は、先代魔王のご命日なのです。いわゆる、お墓参りに行くのですよ。……いい機会ですので、アズマ様を先代にご紹介いたしましょうか」
あー、なるほど。
そうだね、そういうことなら、俺も先代に挨拶したい。
「うん、行ってもいいなら、行きたい。墓参り」
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