『魔王に就職』 ハッピーバース!《15》 ……何かこのままキースがパパってことに流されそうなので、ナウラスに助けを求めようとチラッと見たら、何故かナウラスは、やや下を向いて落ち込んでやがっていて、俺の視線には気づいてもらえなかった……。 「まぁまぁ、パパ候補がたくさん居て、アル様も大変ですわね。……もうここは、誰がいいか、本人に選んでもらいましょうか?」 リッゼがクスクスと笑って、愉快な提案をした。 それ面白い。まぁ本当にパパになるかどうかは別だけど、確かに、まずアルの意見を聞かないとだよな。キースが、「それって、私に凄く不利じゃないか、」とリッゼに文句を言ってたのは聞かなかったことにする。 「アル、アルのパパは誰がいい〜?」 と、早速聞いてみた。……が、どうやらアルの興味は既にママやらパパやらの話にはなく、「ぅーっ、ぅーっ」と身体を反らせて、しきりに他の場所に行きたがっていた。 「あー、はいはい。じっとしてるの飽きちゃったね、お散歩しよっか」 仕方なく、アルの導くままに、リッゼと復活したナウラスを連れてブラブラ会場内を歩く。 「あーっ」 で、たどり着いた所は、 「! な、何だ、何か用か」 ……会場のすみで怠そうにたたずんでいた、エンダリオの所だった。 「あっあっ」 アルがエンダリオにペタペタ触る。どうやら鱗柄の鎧に興味津々のようだ。 「えー……。エンダリオに懐くとか意外……」 どっちかっつーとエンダリオって、目つきも悪いし、ムスッと怒った顔してるのに、アルは恐くないのかな? 「だっ、ダッ、ダー」 ……。 ……ダ? 「! 嘘っ……ダーダ、って……まさかアル、エンダリオがパパだと!?」 何と予想外! アルのダディがここにいたよ! 「……へー、こんなところにダークホースがねぇ」 リッゼも呆然。 「な、何を言ってるんだ? ……ってナウラス様何故にそんな目で俺を……!」 「ダーダ、ダーダッ」 「ほらほら、エンダリオ。アルが抱っこしてってさ、パ・パ♪」 戸惑うエンダリオにアルを抱かせて、その似合わない姿に思わずニヤニヤ。アルは嬉しそうにエンダリオの鎧を指でいじっている。 そんなアルを怒るに怒れず、情けない顔のエンダリオが、非常に面白い。 ふふっ、天真爛漫なアルには誰も敵わないのさ。 ……このまま、元気に明るく、みんなに愛されて育ちますように。 ハッピーバース! アル。 そして、これからよろしく! <END> [*前へ] [戻る] |