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『魔王に就職』
ハッピーバース!《12》
 
「……あ、そうだ。リッゼ、俺、セレアさんのとこに行きたいんだけど」

 ついて来てくれるように、リッゼに頼む。

「魔王殿、セレア殿の所へなら、私もご一緒してよろしいですか?」

 キースもついて来るようだ。そういえば前に、住んでるとこが近いとか言ってたっけ。近所付き合いとかしてるのかな。

 みんなで、セレアたち竜人族の皆さんが集まっているテーブルに向かった。

「セレアさん、」

 目が合ったので、アルを片手で抱き、もう片方の手を振って合図を送る。すぐにセレアが、ニコリと笑って、近づいてきた。

「すみません、本当はもっと早くセレアさんとお話したかったんですけど……」

「いや、こちらこそ、私の方から伺うべきなのに、魔王アズマ殿の周りに人が絶えないから、遠慮してしまったのだ」

 セレアの暖かい眼差しが、何とも心地好い。自然に、笑顔になる。
 アルも、そう感じたのかな?
 それとも、卵のときに育ててもらってたことを、覚えてるのか。

「あー……ぅー」

 パーティーが始まってから1番リラックスした様子で、ジーッとセレアを見ている。
 セレアが、それに気づき、優しく目を細めた。

「セレアさん……、アルのこと、抱いてやって下さい。お願いします」

 お礼とか、アルの身体のこととか、色々話そうと思ってたけど、何ともいえない穏やかさで見つめ合う2人を見たら、言葉が出てこなくて、……声を少し上擦らせてしまいながら、アルをセレアに託した。
 竜人族には赤ちゃんや小さい子どもがいないから、セレアは多分こんな小さい子を抱いたことなんてないだろうけど、スルリと、アルの方から、自然に上手に抱っこされた。

 この人が、パパだよ、

 って言いたい。

 ……でも、セレアが言わないなら、俺からは言えない。
 大きくなったら、きっと、卵のときにセレアに育てられたことを誰かに教えてもらうだろうけど、その時には、無条件に父親だという認識はできないんだろうな……。実際、血は繋がってないんだし。

 何だか、切ない。
 魔王城のみんなは優しいしアルのこと大切に育ててくれるだろうけど……、こうしてたくさんの人に誕生を祝福されてるけど……、
 この子には、父さんも母さんも、いないんだ。

 ……それが、可哀相とか、不幸だとかいうわけじゃない。けど、
 ただ、俺の心が切なかった。

 言葉には知らなくても、せめて、今そうやって合わせた肌で感じて欲しい。
 アル……、その人が、お前が生まれるまで大事に大事に育ててくれた、お父さんなんだ、と。

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あきゅろす。
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