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『魔王に就職』
ハッピーバース!《7》
 

「本日は、魔王後継ぎの誕生を祝うために、多くの方々に集まり頂き、心より感謝を申し上げます」

 俺は玉座の前、ナウラスはその左斜め前の定位置に着いて前を向き一息置いたあと、ナウラスが、口上を述べる。俺は、赤ちゃんを抱いて玉座の前で立ったまま、動かない。客の中には、セレアや水王、精霊の長など、魔王と同等(=魔王領地外勢力のトップ)の身分の者も来ており、座ったままの挨拶は失礼になるからだ。かといって、こういう公の場で感謝の意味でも頭を下げたりなんかしたら、それはそれで他勢力に対する魔王の格を下げることになるらしく、ナウラスには、「とりあえずアズマ様は、食事が始まるまでは何もなさらないで下さい、」と言われている。
 ……何か、さすが仮魔王、的な扱いにちょっと悲しくなったが、下手に出しゃばってパーティーをぶち壊してもいけないので、いい子にしてるさ。

「魔王が腕に抱いている赤子が、先日誕生しました、次期魔王です」

 みんなが、俺の腕の中の赤ちゃんに注目。ザワザワと、会場内が小さくざわめく。

「ご存知の方もいるかと思いますが、故・先代魔王ダラスの意向で、我々は竜人族の卵を後継ぎに譲り受けておりました。その卵が孵化して生まれたのが、この赤子です」

「何と、未熟児……」

 竜人族の内の1人が、思わず声を漏らす。……セレアも、驚いて目を見開いている。
 おそらく、他の客も、竜人族の卵からこんな赤ちゃんが生まれることが滅多にないことを知っているに違いない。戸惑ったような、訝しむような、そんな瞳を赤ちゃんや俺達に向けている。

「……ご心配無用。身体の方は未熟ですが、誕生時に、魔王として相応しい強大な魔力をこの目で確かめました。次代も魔王領が安泰であることを、確信しています。
 ……竜人族頭領セレア殿、」

 ナウラスが、片手を上げて会場のざわめきを抑えるように、落ち着いて言葉を続ける。そして、あまり間を空けないようにして、次にセレアに呼び掛けた。

 何か考え込むように赤ちゃんを見つめていたセレアが、ゆっくりとナウラスに顔を向ける。

「先代との約束を果たし、戦の中にも卵を保護して頂いたこと、改めて御礼申し上げます。こちらも全身全霊をつくして、貰い受けた命を次期魔王として大切に育て上げますので、ご安心下さい」

 ナウラスに力強くそう言われても、あまりに小さい竜人の赤ちゃんを見てまだ不安なんだろう、セレアは、複雑な顔で小さく頷いただけだった。

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あきゅろす。
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