『魔王に就職』
ハッピーバース!《4》
衣装選びも終わって、また暇になった俺。でも他の仕事は下手に手伝えない雰囲気だったので、大人しく応接間や中庭で時間をつぶした。
お昼やお茶も1人で寂しく済ませ、時々赤ちゃんの様子を見に、子守という言い訳で遊びに次期魔王の部屋へ行くが、あまり長居すると小魔物たちの仕事を奪うことになるので、また適当に部屋を出てはブラブラする。
「……暇〜。」
暇なのは普段もそうだから慣れてるはずなんだけど、今日みたいな気持ちが落ち着かない暇はやたらにしんどい。バイト辞めて、次のバイトがなかなか決まらないのに、やる気がでなくて家でダラダラしちゃった時と似ている。
応接間の長椅子に横になって、ボーッとする。
「あら、魔王様。ご気分が優れないご様子ですわね?」
応接間が、花の咲いたような明るさに包まれる。鮮やかな薔薇色の、チャイナドレス風の衣装を身に着けたグラマラス美女が、入口に立っていた。自然、気分も明るくなり、起きて椅子にちゃんと座りなおしてから挨拶する。
「リッゼ〜〜、いらっしゃい! 早いね」
「ウフフ、そうですわね。いつもマスカに負けてますが、たまにはわたくしも頑張って1番乗りでしてよ♪」
スイッと隣に腰掛けて、艶を含んだ笑み。ウヒャー、迫力の美しさです。ナウラスもド迫力美形だけど、やっぱ女の人の綺麗なのはまた一味違うってゆーか、うむうむ、何ともよろしいですな。
「……魔王様。鼻・の・下」
「あっごっごめん」
タハハ……。めっちゃセクハラオヤジな顔で見てしまった。
だってチャイナ(風)だし……。誰が最初にあの騎馬民族衣装をこんなセクシーに着こなしてしまったんだろう、素晴らしい。
「ウフフ。でも、魔王様みたいに一々反応して下さると、女冥利に尽きるってものですわ。まだまだわたくしも枯れていないと言われているようで……」
枯れてるだなんてとんでもない。どのぷるぷる潤いバディがそんなことを言うんだか。
「またまた、リッゼの前じゃ男はみんなこうなるでしょ?」
「あら、魔王様は女性の扱いがお上手ですこと♪」
コロコロと鈴を転がすように笑うリッゼは、正に花もほころぶという表現がピッタリだ。大人の女の色気だけじゃない、時々見せるこういう若い娘の様な可憐な雰囲気が、凄い魅力的。
「……リッゼって、彼氏とかいる?」
間違いなくモテそうだけど、あんまり釣り合う相手が思い付かない。ナウラスとは……美男美女だけどなんとなく違う気がするし。エンダリオとは全然似合わないしな……。ドゥーガやマスカは恋愛対象にはなりにくそう。
「残念ながら今はフリーですの。それに1人が楽ですし」
「そっか」
残念なような、ホッとしたような。
「……でも最近、少し気になる方が居ますわ」
「えっ!?」
何と、世の男共の理想の恋人・リッゼの心を動かす男がいるとは……どこのどいつだ。
驚いてリッゼを見ると、流し目で意味ありげに微笑まれる。えっ、まさか、俺……!?
「だ、誰……?」
「内緒。……わたくしよりも随分年下で寿命も短いんですが、何だか一生懸命な姿が可愛らしくて、つい気になるんです」
ええっ、随分年下って、本当に俺じゃないよね……? いや、リッゼからしたら年下に該当する男なんていくらでも居るか。ああもぅ何かドキドキしてきちゃった……。
「魔王様、お顔が赤うございますわ、いかがいたしまして?」
クスクスと、口元を押えて楽しそうなリッゼ。
「……リッゼ、もしかしてわざと?」
「うふふふ、……それも内緒にしておきますわね♪」
……ちょ、やばい。何このイタズラっ子美女。うっかりハマりそうなんですけど!
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