物語
・・・
紐を解く。
まだ幼さを残す華芯を、そっと抜いた。
「んぅ…っ」
慄える小さな身体。零れる蜜。
よく分からない感情が溢れ出てくる。
解放を促すように、何度も手を上下させた。
彼は身体を艶かしくくねらせる。
声が聞きたくなって、唇を離した。
「ふあぁぁ…!」
不慣れなのか、あっけなく達した。美しくしなる背。
「グリエ…」
潤む瞳が訴える。それを無視して。
「アッ…!」
零れた蜜を掬い取って、指で蕾を開く。
なるべく傷つかぬよう、そっと。
慣れぬ身体はそれでも抵抗した。
「…痛く、してくれ…」
「すみませんねぇ。オレは加虐趣味は持ち合わせていないもんで」
ふざけて言うと軽く睨まれる。
ドロドロとした想いは、もう完全に消えていた。
長い時間をかけて咥えさせた三本の指を引き抜く。
ようやく自身をあてがった。
「入れますよ、いいですか?」
「…莫迦者」
答えになっていない。
苦笑しつつ、ゆっくりと身を沈めた。
「は…ぁ…」
すべて埋めて、零れた切ない吐息は思ったよりも苦しそうではないのを確認する。
オレは安心して律動を開始した。快楽を促すように、華芯も刺激する。
「あっ、あぁ…はっ…、」
「痛くはないみたいですね。よかった」
「…っ、ズルイ…」
背中が痛くないようにと軽く支える。
睨みつけてくる翠は、戸惑っているようだった。
「ぁっ……こんなっ、優しく…れたらっ…憎めないっ!」
「憎まなくていいんですよ、貴方は」
哀しく、脆く、強い。
本当に光り輝くようなお人。
「まっすぐいてください」
自身をギリギリまで引く。
これでいいのか、分からない。けれど。
オレはぐっと奥まで貫いた。
「ああぁぁっ…!」
蜜が散る。
腕の中の存在は目に贅沢なほど美しい。
それきり力の抜けた、しかし安心しきった身体を、オレはぎゅっと抱きしめた。
あの時、あてつけのつもりで薔薇の棘をとらずに渡した。
無意識に選んだ黄色。
あとから調べれば、黄色い薔薇の花言葉は【嫉妬】。
我ながら思わず笑ってしまった。
――オレは果たして、誰に嫉妬したんだろうか?
end
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