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藤色の銀細工(テニスの王子様×戦国BASARA 長編)
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精市くんと出会って早1ヶ月。精市くんとは幼稚園の他にも3日に1度のペースでお互いの家を行き来している。彼はよほど私を気に入ってくれたらしく、会うと至極嬉しそうに笑う。別れ際泣くことは無くなったが今でも嫌そうに顔が歪む。
…最初のうちは大変だった。

彼はいつも話しながら私に抱きついたり、髪を撫でたりする。この年頃の子供は愛情表現が豊かなのだろう。中身が戦国人の私からしたら多少驚くこともあるが、親が仲良しね、なんて呑気に笑っているのだからここでは普通なのかもしれない。私としても少女のような可愛らしい精市くんが甘えてくるのは非常に可愛らしく、満更ではないのだ。

そして偶然にも父同士も大学のサークルの先輩後輩だったらしく、所謂家族ぐるみの仲というのになってしまった。(実は今度一緒に遊びに行こうと計画されていた。何とも行動が早い大人たちである。)

そして最近精市くんに変化が訪れたようだ。どうやら精市くんは最近テニスというスポーツを始めたらしい。私はテレビでやっているところしか見たことがないので詳しくはしらないが、精市くんの様子からしてきっと楽しいものなのだろう。見に来てほしいと精市くんが誘ってくれるため近々行くことになるだろう。今日もテニスの話を聞きながら私はおやつのプリンをすくった。


さて、ここはテニスコートである。精市くんに連れられてテニスを見に来た私は今コート横のベンチに座っている。拳ほどの緑色のボールをラケットというもので打っている。時たま私の方を見て手を振ってくる精市くんに対して手を振り返す。しばらくその様子を見ていると休憩のためか精市くんがこちらにやって来たので飲み物を渡しておく。


「名前ちゃん!どうだいテニスは!」

「うむ。とても良いものだな、精市くん。スポーツというものを目の前で見たのは初めてだが、精市くんが楽しそうなのを見て好きになった。」

「…っ!!!そっか!!!あ、よかったら名前ちゃんもやってみない?ラケットは俺のを貸すし。」

「いいのか?実は少しやってみたかったんだ。」

「うん!あ、それなら俺とラリーしようよ!あっちのコート空いてるよ!」

興奮気味の精市くんに連れられてテニスコートに入りラケットを持つ。やはり刀とは勝手が違うな。精市くんがしていたのと同じように姿勢を低くしてラケットを構えてみる。
するといくよーと声がかかったあとに精市くんがサーブをした。

…彼は本当に初心者なのだろうか?
始めて1週間には思えないサーブが来た。しかしここは元武将の負けず嫌いの血が騒ぎ必死にボールを打ち返した。その後20回程ラリーが続いたあとに私がボールを落とした。ちょっと悔しくてもう一度と頼み込む。その後3,4回ほどやってもらっところで時間になってしまい今日のところは帰ることになった。

「ねぇ、名前ちゃん。名前ちゃんのこと名前って呼んでもいいかい?テレビでね、名前だけで呼ぶのは仲良しの証だって言ってたんだ。」

「うむ。もちろんだ。それでは私も精市と読んでも良いか?」

「うん!もちろん!名前!!!」

「何だ、精市?」

「ねぇ、名前、またテニス一緒にやろうよ。」

「うむ。私も行きたいと思っていたところだ。よければまた連れて行ってくれ。」

そんな会話をしながら私たちは帰路についた。

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