フラベル
昼食
―…とある昼食の時間…
「ばっ…!?やめろ!カエル…ッ!!」
「これはもうミーのモノですー」
今日の昼食は、ハンバーグとスープとパン、
デザートに季節のフルーツを少々。
「それ、王子のパンだろっ!?」
「ミーは最初から3個ありましたよ?堕王子、ついに記憶力まで堕ちちゃったんですかー?」
―グサッグサッ!!
「―ゲロ…ッ…」
ベルの綺麗に磨かれたナイフが、フランのカエルの帽子に容赦なく突き刺さった。
「ベル先輩ー、本気で痛いんですってばぁー」
フランが少し涙目でベルを睨みつける。
「そんな事知らねーしっ。早くパン返せよ」
ベルがフランの椅子へと歩いていき、フランの手からパンを取ろうとした。
―もぐもぐっ
―ごっくん。
「あ…。ついつい食べちゃいましたー」
つかぬ間の沈黙…。
「…許さねぇ!!!カエルッ!!!!」
ベルがフランに襲いかかる。
―かぷっ…
フランが襲い掛かってきたベルの手を咥える。
「ベル先輩の手、パンより美味しいんですねー」
緑色の髪から覗くライトグリーンの瞳は、もう先程の涙目とは違う、艶を持っていた。
「―…もうパンはいらねぇー…」
ベルは少しの間、何が起こったのかを理解できないでいたが、
少し考える素振りを見せたかと思うと、そういい残し、自分の席へと戻って行った。
***
「ベル先輩ー、もう食べ終わったんなら何処か行きましょうよー」
「……。」
あれからベルは1人窓の外を眺めたまま、フランを無視していた。
「………そういう態度できますか…」
「……。」
フランはそっとベルの後ろへ周り、ベルの耳元で、思いっきり熱のある、とびっきりの甘い声で囁いた。
「ベル先輩、無視しないでくださいよ」
「……。」
ベルは窓の外を眺めたまま、動かない。
「大好きな先輩に無視されたら、さすがのミーもめちゃくちゃへこみます…」
「――ッ……///」
やった!効いた!
フランは密かにガッツポーズをした。
「ベル先輩っ、好きですー。大好きなんですー」
フランは後ろからベルに抱きついた。
「ベル先輩…」
「変態馬鹿カエル…ッ……///」
ベルはそう言いながらも、首を後ろへ傾け、フランの唇へ自分の唇を重ねた。
「悔しいですけど、生意気な堕王子に本気なんですよ」
それはある晴れた午後の、いつもと変わらぬ日常。
*end*
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