フラベル
強がり
「ベル先輩ー、その髪型どうにかならないんですかー?」
「うっせ!王子はこれでいーんだよ」
「へぇー、まぁ…別に人の悪趣味に口出しはしませんけどー…」
本当、ムカつく!このカエル!
王子の髪型にいちいちけちつけてくるなんて。
「それじゃあ、ミーちょっと出かけてきますー」
「は?何処に…?」
「秘密でーす」
人の髪型にけちつけたと思ったら、急にスタスタと部屋を出て行ってしまった。
「………っはぁーーー…」
本当、フランといると疲れる。
口開いたら人の嫌味しかしゃべらないし。
今まで生きてきて、どんな人にも男女年齢関係なく甘える事ができた。
でも、何故かフランにだけは最初から甘える事が出来ない。
本当は、さっきだって何処に行くのかすごく気になった。
一緒に行きたいと思った。
誰かに会うのかと思うと胸の奥が痛んだ。
きっと、甘えられないのも、素直になれないのも、こんな気持ちになるのも、俺がフランの事を好きだからだ。
この気持ちに気づいたのは2ヶ月前。
任務を終えて、フランと2人で近道の森を歩いていた時だった…。
***
「ベル先輩ー、頭に葉っぱ付いてますよー……かっこ悪」
「あ゛ぁ?お前は1言余計なんだよっ」
「だってー、本当の事じゃないですかー」
「…もうしゃべんなっ」
相変わらずフランは、いつも通りに毒舌を吐いていた。
「ベル先輩っ…!!!」
「―っ!?」
―ドサッ…!!
「…へっ…?」
急にフランが真剣な顔で俺の体を抱きしめてきた。
「まだ残ってたんですね…」
フランの視線の先には、先程倒したはずの小弱マフィアの1人が居た。
まだ1人だけ生きていたようだ。
「…ベル先輩がちゃんと全員いるか確かめないから…」
「はっ!?俺のせいかよ!」
「まぁ、ミーが片付けてきますので、ベル先輩は此処で待っていて下さい」
そう言ってフランは、茂みへ先程のヤツを追って入っていった。
「…毒舌ガエル…」
言葉とは裏腹に、俺の胸はすごい速さで脈打っていった。
顔も少し熱い気がする。
「きゅ、急に抱きついてくるからっ……だよな?」
まだ背中にフランの手の温もりが残っている…。
あんなにフランと接近したのは、もちろん初めてで、
冷たい言葉しか吐かないフランの腕の中が温かい事や、少しだけ落ち着いたと感じたのも初めてだった。
***
「…っはぁーー…やっぱ俺、どこかおかしいのかも…」
「そりゃそうですよ。今更何言ってるんですかー」
「―っフ、フランっ…!?」
部屋を出て行ったはずのフランが、俺の後ろに居た。
いつ帰ってきたのだろう?
「はい、ベル先輩の頭があまりにも回転が遅いので、甘いもの買ってきてあげました」
そう言ったフランの手には、俺のお気に入りの店のシュークリームの箱があった。
「いらないんですかー?」
「いっ、いる!……しょうがないから食ってやるよ…」
「あ、じゃあ無理して食べなくていいです。ミーが2つとも食べるんで」
「ダメッ!!…そ、それは……王子のだしっ」
本当、素直じゃない自分が可愛くない。
「しょうがないですねー。ミーは絶対可愛げの無い大人にだけはなりたくないです」
「…!!……お、王子は可愛いんじゃなくて、かっこいいからいいもん」
「うわぁー、それ自分で言っちゃうんですかー?」
「うっせ!!早くシュークリーム渡せっ!」
まさかフランが自分のためにシュークリームをわざわざ買いに行ってくれていたなんて想像もしていなかった。
…めちゃくちゃ、嬉しい…///
「ベル先輩はやっぱり頭の回転が遅いですー」
「はぁ!?」
「…普通、ミーが1人だけいないのに気づかないわけないじゃないですかー」
「…えっ…?」
もしかして、俺が自分の気持ちに気づいた日の事だろうか?
「あれ、ミーの幻術ですよ」
「………は?」
一瞬部屋の中の空気が止まった。
「もっと甘いもの食べたほうがいいですよ。堕王子」
それって、それって…
もしかして…
*end*
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