雲綱
1
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*注意*
雲雀→社会人
綱吉→高校生
で、わけあって同棲してます。
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月の光が道を照らし、街灯に明かりが灯り始めた頃。
綺麗なふわふわの髪を夜風になびかせながら、一人の少年が自宅への帰路を重い足と心を引きずりながら歩いていた。
「はっあぁぁー……」
「(どうしてこうなった!?)」
少年の口からは、先程からため息しか漏れてこない。
***
―…一週間前、此処並盛町は近年では珍しい程の激しい大嵐に見舞われた。
「雨漏りが酷い。直るまで部屋をかして欲しい。」
ふわふわ髪の少年……沢田綱吉の部屋を、切れ長な目が特徴的な黒髪の青年が訪ねてきた。
幸いにも綱吉の部屋は雨漏りをする事もなく無事だったため、少々躊躇ったが、断る理由も無く、その青年が自分の部屋で生活するという事を承知した。
実は綱吉には、その整った顔に見覚えがあった。
たしか、ここ最近隣の部屋に越して来た、近所の女性陣達に噂のサラリーマンだ。
…否、サラリーマンと表すのではなく、大手企業に勤めていそうな謎の男と表した方が正確なのかもしれない。
「(あれっ?でもそんな良い会社に勤めている人なら、こんなボロアパートに越して来ないか。)」
それは一週間生活を共にした事からも分かった。
「綱吉、水出しっぱなし。」
「綱吉、冷蔵庫開けっ放し。」
「電気付けっぱなし。」
そうは言うものの、近くに居ても自分から水道の蛇口を閉めたり、冷蔵庫の扉を閉めたり、電気のスイッチを消してくれたりなどの行為は決してしてくれない。
「(本当、冷たいというか、意地悪だよな…。)」
これが、一週間で綱吉が雲雀恭弥に抱いた印象だった。
***
「…た、ただいまー…」
最後の方は声が小さくなる。
「………あれ?」
奥の部屋は確かに明かりが付いているのに、返事などの声は一向に聞こえてこない。
「出掛けてるのかな…?」
雲雀は冷たいと言っても、いつも綱吉が帰って来ると玄関まで迎えに来てくれていた。
「(電気付けたままコンビニに行ったとか…?あの人俺には厳しいのに、自分には案外甘いからな…。)」
少し寂しい様な感覚に襲われるものの、その感情を無視して綱吉は明かりの灯る奥の部屋のドアを開けた。
「(…えっ!寝てるっ!?)」
綱吉がそぉーっと何故か恐る恐る扉を開けると、シンプル(単に狭くて物が置けないだけ)な部屋に似つかない黒色のソファーに体を預け、規則正しく寝息をたてる雲雀がいた。
「(う、うわぁー…。あの雲雀さんが、寝てるっ!)」
普段、絶対に綱吉にスキを見せない雲雀が、綱吉の目の前で無防備に寝息をたてている…。
「(なんかこういう時って、悪戯したくなっちゃうよなー)」
綱吉は、そっと雲雀のサラサラの黒髪に触れてみた。
「…あ、思ってたよりもサラサラしてる」
ついつい面白くなって来て、指に絡まる黒髪を軽く引っ張ってみた。
「…………つ、な…ょし…」
「―――――っ!?」
突然の呟きに、綱吉の胸は不覚にもドキッとしてしまう。
「―……電気、つけっぱなし……。」
「……。あ、やっぱそういう落ちですか。」
***
雲雀は綱吉の部屋で寝泊まりする様になってから、隣の自室から黒いソファーを無理矢理綱吉の部屋に押し込んできた。
「雲雀さん、ベッドで寝て下さい。俺は床で寝ますから…。」
少し前、綱吉は雲雀にそう提案した事がある。
「君はもっと背中を悪くしたいみたいだね。歳をとったら苦労するよ?」
「……うっ」
さりげなく最近体育の時間に痛めた背中の話を振られて、綱吉の提案は見事にスルーされた。
「雲雀さん、まだ寝ないんですか?」
それに雲雀は、毎日夜遅くまで会社の書類を整理している。
「君は嫌みしか言えないの?」
雲雀が何故遅くまで毎日書類を整理しているのか…?
その答えはいたって簡単。
「いつも夕食作ってくださり、ありがとうございます。」
そう、毎晩綱吉の夕食を作るために、会社を早く切り上げて来るからなのだ。
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あとがき
続きます(ω)!
雲雀さんと綱吉の関係は進展するのかっ!?
同棲の期間にも終わりが近づいて来ます…。
蜜玲
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