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雲綱


雲雀さんから逃げる様な形で教室まで走ってきた俺は、めちゃくちゃ息を切らしていた。



「十代目ッ!?大丈夫っすか!?」



訳ありで、俺よりも先に学校へ着いていた獄寺くんが、目を丸くして駆け寄って来た。



「ご…、獄寺、くんッ……、やっ、ぱ…雲雀さん、は…怖い…ね、」



声が少し震えていたのは、息切れのためなのか。

はたまた雲雀さんへの恐怖なのか。


とりあえず息を整えるために、先程から痛んでいる胸は無視する事にした。














***





にこにこにこ






今視線の先にいる人物に、音をつけるのならばまさにそれだろう。






『やぁ、沢田!』


きっと今話しかけたら元気にそう言うだろうなー…。





話しかけてみようか。

反応が面白そうだし。











「…ひばっ「雲雀ー!」












「やぁ、山本武!」




満面の笑顔は俺にじゃなく、山本に向けられた。














***





「十代目ー、山本の奴今日部活で遅れるそうっす。本当野球馬鹿ですよねー………ってえぇ!?…十代目?」














「……………………えっ?」




「……………もしかして、泣いてらっしゃいました?」








言われて初めて気がついた。



俺、泣いてた。


でも何で?






「目赤かったので…。すみません!俺の勘違いみたいっすね!」



獄寺くんはいつもみたいににかっと笑うと、深くつっこんでくる事もなく、教室を出るよう俺にうながした。






なんで胸が痛いのか、

なんで知らぬ間に泣いていたのか、

考える事はいっぱいあったけど、今は全部無視することにした…―。













***




次の日、早朝。








「あれっ?今日雲雀いないっすね」

「本当だ!どうしたんだろーな」



いつものように登校時間ギリギリで学校にたどり着くと、最近見慣れた学ラン姿は無かった。





「体調でも崩したのかな?」


あの雲雀さん、
特に最近の雲雀さんからはそんな事考えられなかったけど、口に出してみた。



「それはないと思うぜ?昨日帰りにあったんだけど、すっげー元気そうだったし。」


「そ、そっかー…。そうだよね」


「十代目が心配なさること無いっすよ!今日も学校のどこかでにやけてますって!この前なんか、あいつ屋上で鳥に向かってにやけてましたよ!?」




二人の声が遠く感じる。



だけど、

その一言一言は正確に俺の中へと入ってくる。




なんか、俺だけ置いてかれた感じ。

二人は雲雀さんの事色々知ってるのに、俺は何も知らない。



雲雀さんは笑って挨拶をしてきてくれるけど、俺が一人の時は、あんなに明るい笑顔は見せてこない。


やっぱり俺は置いてきぼり?



邪魔な存在?













「あっ!雲雀!」



獄寺くんの声に、思わず顔をあげた。












「君達何群れてるの?…咬み殺す」



黒の学ランをなびかせながら歩いてきた風紀委員長は、そう呟いてトンファーを光らせた。






*続く*



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あきゅろす。
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