短編
温かさ
「なぁ、優都(ゆうと)!1組の斉藤(さいとう)って可愛くない!?」
「斉藤?…お前また好きなヤツできたのか?」
俺の友達、涼牙(りょうが)はころころ女を変える。
長く持って1週間。酷い時はヤって終わり。
「だってさぁー、斉藤の笑顔やばいもん!キュンってくるんだよー」
―ズキッ…
「悪りぃー、俺今日買い物頼まれてたから先帰るわ。斉藤さんによろしく」
「えぇー!優都一緒に帰ろうぜぇー!」
俺は後ろで叫ぶ涼牙を無視して、早歩きになりながら自宅へと向かう。
自分の中で広がってゆくもやもやした気持ちの意味を考えながら…
―自宅…
「はぁー…また新しい女かよっ」
そう、俺は涼牙が好きだ。たぶん中学の時からずっと…。
「笑顔が可愛いとか俺に言われても困るし。全然あんなヤツの笑った顔なんてキュンってこねーし」
俺はずっと前から涼牙だけを見てきた。どんなにころころ女を変えても…。
「お前の笑った顔の方が…ずっと、ずっと…う゛っ…、っ…」
お前が新しい女を作るたびに俺がどんだけ苦しいか分かるか?
お前が女を捨てるたびに俺がどんだけ心ん中で喜んでるか分かるか?
「…ひぃっ…ぅ、っ…ばぁーかっ…気づけよっ、な…」
―次の日…
「優都っ!おっす!」
「…あ、斉藤さんおはようっ!」
「…なぁ、優都。何か俺に怒ってる?」
「別にー」
俺は頭ん中できっと斉藤の笑顔を思い出している涼牙を置いて、1人教室へと向かった…
いや、向かうはずだった。
「優都、俺何かしたか?」
いつもは追いかけてこない涼牙が、俺の制服の袖を掴むまでは…。
「…っ!?優都!?泣いてんのかっ!?」
「…うっせ!!鈍感っ!!」
俺が涼牙の腕を振り払おうとする。
―ちゅっ…
「………は…?」
…今こいつ、何した?
「優都が泣いてたら心配になるにきまってんだろっ!?」
「…涼牙、お前今俺に何した?」
「は?そんなの言わなくても分かんだろっ!?」
―パチンッ!!
「―っ!?」
「いい加減にしろよっ!?お前何で心配ってだけで俺にキスすんだよっ!?お前鈍感すぎなんだよっ!!!」
ありえない。こんなヤツだったなんて…。
「…俺は、優都が泣いてると心配なんだよ…っ」
「はっ!?お前は男でも女でも構わず心配だったらキスすんのかよっ!?」
やばい、止まらねぇ…
「俺、そんなに軽いか?」
「軽すぎんだろっ!!いっつもすぐ女ころころ変えやがって!!」
もう一層、俺を嫌ってくれたら…
「好きなんだよ、お前の事が…」
…。
「優都、俺はずっとお前が好きなんだよっ!!!!」
「いっつも女変えてんのは、少しでもお前にやきもち焼いてもらいたくてっ…!」
「涼牙は…馬鹿だなっ」
1番馬鹿なのはきっとおれ自身だけど。
「俺だって、ずっと好きだった」
*end*
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