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過去拍手お礼文
不良×虐められっ子3

〜小夏side〜



『なぁ水瀬、お前にとって俺の存在は大きい?』




僕は答えることができなかった。

否、答えたかったのに、いったい何から伝えればよいのか分からなかった。




佐伯くんは見た目が怖いし、喧嘩っ早いし、金髪で。
みんなそんな佐伯くんを恐れている。

僕も最初はそのうちの一人で、佐伯くんの見た目や噂で『怖い人』と判断していた。



けれど、此処最近の『佐伯氷里』は、違う。
不器用だけど優しくて、弱い者の見方で、笑うと可愛い人なのだ。

本当の『佐伯氷里』は、そんな優しい人だったのだ。






***


「この前は、悪かった。」


いつものように皆が帰った教室を一人掃除していると、佐伯くんが鞄を持ってやってきた。



「俺、自分がよく分かんねぇんだ。」


「……。」



教室の扉の近くにあった椅子を引き、その上に座る。



「中学までは毎日喧嘩するか、サボって屋上かゲーセンでぼーっとしてるかだった。」


少なからず、皆が騒いでいる噂が本当だったのだと知った。


「けど、高校に入ってから、中学まで繰り返してた事なんかどうでもよくなるような衝撃を受けたんだ。」

「…衝撃?」


恐る恐る佐伯くんの言葉を繰り返すと、深く頷かれた。



「入学式の後、教室に戻る時、ある一人のヤツに目がいった。」








最初は何かよく分からなかった。

けど、いつも気づくとソイツを探してる自分がいた。

だから自分から話しかけてみた。






ゆっくりと、思い出すように佐伯くんが語る。
何処かほんのりと赤い頬。いつもの威厳さは何処へいったのか、と思わせるような幸せそうな顔。



ドクン、ドクン、

それに合わせて自分の心臓が誰かに鷲掴みにされたような、苦しくて悲しい気持ちになった。







「佐伯くん、その人のこと、好き…なんだね。」


「……え、?」




今気づきましたと言わんばかりに、佐伯くんの瞳が見開いた。



「その人のこと、佐伯くんはきっと好きなんだよ、」



目頭が熱い。心臓が痛い。

こんな、こんなこと今まで一度だってなかったのに。




その人のことを好き、と気づいた佐伯くんは、放課後もその人と一緒に寄り道したり、手を繋いで帰ったりするのかな?

そうすれば、気まぐれでかまってくれていたこの時間も無くなるのかな?

あの笑顔をその人にも、否、その人だけに見せるのかな?




自分が言った言葉にこれ程後悔するなんて、まるで、否、これは…







「……僕が、佐伯くんを、好きみたいじゃないか…っ」



隠そうと必死に目を逸らしていた真実。

受け入れてしまうと思ったより簡単に当てはまる。


そうだ、きっと僕は本当の佐伯くんを知ってからずっと、彼を好きだったんだと思う。

だから今こんなにも涙が止まらないんだ。





「…好きみたいって、…水瀬、お前も…好きでいて…くれてるのか?」


「……ごめんなさい、ごめんなっ……ぅう、」



謝るのに必死で、佐伯くんが何を言っているのかなんて、耳に入ってこなかった。




「…ッ、ごめんな、さ…ッ、ごめ、」


「水瀬…?おい、なんで謝って……」


「佐伯く、…その人が好き…なのっ、に…僕、ぼく、」




―…ギュッ、



「落ち着けって、」



ちょっと熱く掠れた声。

なんでまた、僕、抱きしめられてるの…っ?




「…ぅう、佐伯くんを、好きでっ…ごめんなさい、」


困らせたく無いのに。

でも好きだから。



「…なんで謝るんだよ。」


先程とは違う、どこか怒りを滲ませた低い声。


「俺は水瀬が好きだ。それを水瀬が気づかせてくれた。」


何言ってるの?

混乱する頭では、まったく今の現状を理解出来なかった。



「好きなヤツに好かれて、嫌な訳ねぇだろ?」


「……僕が、好き?」









「お前やっぱ何か勘違いしてただろ。」






しっかりしてそうで、実は肝心な所抜けてっからな、水瀬は。
(まぁ、そんなところも可愛いんだけど…)



あれから佐伯くんが、僕が抜けてるだとか何とか言っていたけど、佐伯くんと両思いだったという事に驚いて、フリーズ状態だった僕には、その言葉は届いていなかった。


*end*



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拍手ありがとうございましたっ(^O^)/☆

"不良×虐められっ子"第三弾です!



リクエストありがとうございますm(__)mペコッ


やっと両思いに辿り着けました(笑)

次回はもっと二人が進展出来るように頑張ります!



蜜玲




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