6.外出
あと2週間で夏休みが終わる。
本来の夏休みならどっかに行ったりしてたんだろーなーとか一樹の家に泊まってゲーム三昧しているのに、と思った。
ま、オレにとって次の休みは冬休みだったんだけど。
この夏休みは本読むだけとかどんだけガリ勉なんだ。
ってか杖を持っていない時点で実技の勉強はしていない。少なからずホグワーツの新生活に不安が過ぎった。
スクイブだったらどうするつもりだ(あ、でも姿現しはできたからスクイブではないか)
ガチャ、とドアが開く音がしマダム・ポムフリーか?と思ったがそこに現れたのはダンブルドアだった。
「慧、調子はどうかの?」
ニコニコと笑い近くにあった椅子に腰を掛けるダンブルドア。
ダンブルドアは忙しいらしく夏休みは殆どどっかに行っていてオレは数回しか会っていなかった。
「まぁまぁ。あのクソまずい薬のおかげだ」
毎日あの酷い味を飲まされてるのに慣れというのは恐ろしいもので始めは臭いを嗅ぐのも嫌だったのに今は普通に飲むことが出来るようになった
。味は本当に酷いんだが。そのうち味覚がおかしくなるんじゃないかと思う。
「そうか。随分顔色が良くなったから儂も安心したわい」
「どうも。今日は仕事ないのか?」
「おぉ、今日は校長としての仕事をしに来たんじゃよ」
「?」
渡されたのは封筒。
ホグワーツ 医務室 ベッドの上、慧・狩野様と緑のインクで書かれていた。
手紙を見ると3年でいる教科書や道具のリストだった。オレは何も持ってないから余計に多い。
「本当にホグワーツに通うのか」
「もちろんじゃ。君にはその資格がある。
そこでじゃ、君の学用品を揃えにゃいかん」
「外に出て良いのか?」
「マダムには儂から言おう。ということで今から行こうと思っておったんじゃが行けるかの?」
「あぁ。行ける!」
やっと外に出れることにテンションが上がりうれしくなった。
するとコンコン、と窓が叩く音がするとそこに梟がいて手紙をくわえていた。窓を開ければ梟はダンブルドアに渡すとまた空へ飛んで行った。
「…魔法省からじゃ」
手紙を覗けばすぐに来て欲しいと書かれていた。
「ガキじゃねーしオレ一人で行けるぜ?」
「儂は慧と行きたかったんじゃがの」
ガクッとうなだれてるダンブルドアに仕事なんだからしょうがないだろと言った。
シャツに学ランを着て(破れていたがマクゴナガルが直してくれていた)着々と用意をしていった。
制服を着るとやはり小さくなってしまったからかサイズがでかかった。
ウエストはベルトでズボンを固定したのでこのままで良いやと用意を終えダンブルドアに着いて行った。
「煙突飛行で行くのか?」
校長室に着いて煙突飛行で行くみたいなのだが校長室にある色んなものに目が行ってしまう。
キレイな色をした液体やキラキラした砂時計などがある。
「使い方はわかるかの?」
あぁと返事を返し粉が入ったゴブレットを取ろうとした時にダンブルドアに鍵を渡された。
「グリンゴッツの鍵じゃ。君が管理しなさい」
「な、金は貸してもらうとしても鍵まで受け取れねーよ!」
鍵を返そうとしたが先にダンブルドアが暖炉に入ってしまって緑の炎に包まれて消えていった。逃げられた。
「…ったく、漏れ鍋!!」
目の前に緑の炎が上がった。
「だあぁっ!!」
着地失敗。暖炉から吐き出されて尻餅をつくと服に付いた灰を落とした。
「イッタタ…」
とりあえず金を下ろさないと買うものも買えないとトムに道を聞いて銀行に足を運んだ。
トロッコに揺られて(もはや衝撃)金庫に着いて開くと金の多さに立ちくらみがした。
アホか!!こんなにある金を渡すとかアホかあのジジイ!!
そう思いながらも袋に金貨をザクザクと詰めていった。
銀行を出て杖は時間がかかるから最後だなと思い制服を先に買うか、とマダム・マルキンの洋品店に向かった。
「ホグワーツの制服お願いしたいんですけどー」
「はいはい、あらかわいい新入生さんね!!そこの台の上に上がってくれる?」
「……3年だ」
そんなに11歳に見えるのか。
「え!?3年生!?あらやだ失礼。制服一式って制服どうしたの?」
「3年から編入することになったんだ」
珍しいこともあるのね〜と採寸をして制服を買った。
本屋とオリバンダーの店ってどっちが近いかと聞けばオリバンダーの方が近いらしいので予定を変えオリバンダーの店に向かった。
カランカラン、とドアを開けた時にベルの音がして店に入るとオリバンダーであろう老人がカウンターにいた。
「いらっしゃい」
「杖買いに来たんだけど」
「杖腕はどちらですかな?」
「左。」
左手を出せばメジャーで計ったりして一つの箱から杖を出した。
あー今から物壊しまくるとか気が引ける。
「樫の木にユニコーンの尾、人魚の涙28センチ」
ヒュッと軽く振った瞬間に花瓶が爆発した。
割れるじゃなくて爆発ってどういうことだよ!?
「次、ブナにドラゴンの息吹、妖精の羽25センチ」
バァン!!
後ろの窓が木っ端みじんになった。
「(えー)」
ガシャーン!!バリーン!!ドォオオン!!
「……(もう店潰れるぞ)」
「いやはやこれは難しい。これはどうかな珍しい組み合わせで東洋の物ばかり使っておる。
銀杏の木、紅葉の葉、白虎の毛、32センチ」
「銀杏〜?そこは桜とかじゃねぇのかよ」
しかし握った瞬間、吸い付く様な感じがした。これがオレの杖だ。
振った瞬間光の粉が出たー!!
「おぉ!!お見事!!こんな珍しい杖に持ち主が現れるとは!お名前を教えてくれんか?」
「慧・狩野」
「狩野殿、この杖は非常に攻撃的で戦いに優れておる。」
「オレにぴったり」
「守るのも傷つけるのも本人次第ということを覚えておいて欲しい」
「あぁ、自分の領域の物は守る」
金を渡して本屋へと向かった。
本屋では教科書はもちろんだが他にも気に入った本を買った。
学校では習わない上級魔法薬の本、法にギリギリ掛からない呪い、闇払いが使用する攻撃呪文。
この3冊は見た瞬間にカゴに入れた。他は立ち読みして覚えた。こういう時速読って役に立つよな!
店を出た時に、なんか少年達が騒いでいた。
一人は地面に尻餅をついて泥だらけだ。物凄い顔で睨んでいる。
杖を取られたんだろう。くしゃくしゃな黒髪に眼鏡の奴が杖を2本持っていた。
「スニベルス、久しぶり。相変わらず脂っこい髪の毛だね」
「ポッター…!!僕の杖を返せ!!」
「マグル式で取りに来たらどうだ?」
ハン、と隣にいた背の高い黒髪の奴が笑いながら言った。
「くっ…!!」
悔しそうに睨む少年(多分スネイプ)に慧は少し同情した。
ポッターって言った時点でこいつは未来のハリーの父親のジェームズだ。
「(ってか店から出れねーし)お前らどけ、邪魔だ。店の前で騒いでんじゃねーよ」
「君は?」
「ただの通行人だ。レインズ、落ちろ」
スネイプに向かって杖を振ると泥が消えた。
「(使えんじゃん、魔法)」
ちょっと感動してたらスネイプ(仮)に余計なお世話だ!!と言われた。
まぁその通りだな。いきなり知らん奴に助けられたらそう思うわ。
「スニベルス、年下に助けられるなんて良かったな!!」
嘲笑うように笑ってるシリウス・ブラック(仮)。
その後ろを見れば多分リーマス・ルーピンとピーター・ペティグリューらしき人物もいる。
「学校以外で魔法を使っちゃダメなの知らないのかい?」
「まだ学校に入ってねーから魔法を使っても魔法省からは何も言われねーよ」
「君見ない格好だし、マグル?」
黒い襟が首元まである長袖に金ボタンを2番目まで外して少し長いのか足元まで布が余ったズボンを履いていた。
で、肌も僕らと違った。髪は金髪だが。外国人?
「マグルとかなんでお前に言わなきゃいけねーんだ。
おいそこの眼鏡、こいつに杖返してやれよ」
少し睨むと金髪はヒッ!!と悲鳴を上げて茶髪の後ろに隠れた。
眼鏡は面白そうな顔をしながら言った。
「新入生の君が僕から杖を取れるとでも?」
「エクスペリアームズ」
「あ!!」
ピン、と音がすると慧の右手には2本の杖があった。
「取れちまったな」
ニヤリと笑うとスネイプ(仮)にどっちの杖だと聞けば無言で自分の杖を取った。
「な、今の呪文は2年で習う呪文だぞ!?」
「それが?」
でかい方の黒髪が驚いているとオレは眼鏡に杖を投げてポケットに入れていたケータイで時間を確認した。
「うわ、予定より遅くなってんな」
持ってる荷物に縮小呪文を掛けスクール鞄に入れるとどこかに歩いて行ってしまった。
5人は呆然としていたがいち早くスネイプは気付きスネイプもどこかに歩いて行った。
「何だったんだあいつ…」
「「「さぁ…」」」
「さー次は私服買いに行くぞー」
と漏れ鍋で両替をして出てマグルの街へ足を進めた。
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