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5.色々考える
「しっかり食べないと治るものも治りませんよ」

「…ムリ」

テーブルの上に置かれた食事にはほとんど手を付けずスープやゼリーなどの噛まなくていいものしか食べていなかった。

「…食べるのしんどい…」
ボソッと様子を見に来たマクゴナガルに言う。
あれから数日が経つが血液不足による体力低下。
身体を動かせば傷が痛むので1日のほとんどを睡眠にあてていた。
意識が戻ったときは興奮してアドレナリンが出ていたんだろう。
次の日からはもうこのローテンションだった。

「次の夕食はもう少し食べなさい」

マクゴナガルが食事を下げると次はマダム・ポムフリーがやってきた。

「包帯を交換しますよ」

「…………」

毎回食事後に薬を塗り包帯を交換するのだがこれが本当に辛い。
薬が浸みて痛いし生々しい傷を見るのも気持ち悪くなる。本当に良く死ななかったものだ。
包帯を外すとめった刺しにされた傷口が目に入る。
あぁやっぱり気分が悪くなった。

「いきますよ」

「っ!!うあ゙っ!!」

声を上げない様ベッドのシーツを掴み痛みに耐えるが痛いもんは痛い。
あの野郎、一体どんだけ刺しやがったんだ!!
今度会ったら絶対に再起不能にしてやると憎しみの感情のおかげでまだこの痛みに耐えることができた。
薬を塗り終えぐったりしているとマクゴナガルが額の脂汗を拭いてくれた。

「そこまで声を出すのを我慢しなくても良いのですよ」

「オレはそこまで、ガキじゃない」

「確かにあなたは来年で成人ですが今は充分子供です。

大人の身体でも苦痛のはずなのにその身体では余計に苦しいのではないですか?」

それに日本では20歳で成人でしょうと言われ返す言葉がなかった。


「ハァ…マクゴナガル先生、1・2年の教科書を見せてくれないですか結構暇なんで」

この部屋から出ることもできないしと言うとすぐに持ってきてくれた。
とりあえず一番興味のあった魔法薬学の教科書をパラパラマンガのようにページをめくって読んだ。
2年の教科書に手を延ばし同じ様に読むとふーん面白いな…と独り言を言い次の教科書とテーブルの方に目をやると目を点にしたマクゴナガルが視界に入った。

「何?」

「今ので読んだのですか?」

「あー速読?施設じゃゆっくり読む時間なかったからな。
あ、でもこの読み方だとすぐに読み終わるからやめといた方がいいか」

と変身術の教科書は普通に読んでいった。



あれから8月に入りまだ本調子ではないがなんとか歩けるまで出来るようになった。
図書館までの外出まで許されたので、だ。
今オレの中でニコチンが欲しくてここ最近ずっとイライラしている訳だ。
いや、よく1ヶ月もったと思う!…というか煙草なんて吸える状況と場所ではなかったんだが。
俺は3日に一箱は吸ってたから(あまり金が無い為吸いたくてもそんなに吸えない)

中庭に出てちょうどそこにあったベンチに腰かけると鞄の中から煙草を探す。
鞄の中には財布に定期、筆箱にノート、iPod(新しいのが欲しいからと一樹の姉さんからのお下がり)ケータイに数学の教科書…これは間違えて持って帰ったんだろう。
ケータイを開くと圏外の文字。
無理だと思いながらも着信履歴にあった由利の名前を見て通話ボタンを押した。

『電波状況の良い場所でもう一度おかけください』

「やっぱり使えねーよなぁ…」

何とも愛想のない機械音に少しでも期待したオレがバカだったとケータイを閉じた。

「由利…心配してるよなぁ」

帰る、って言ったきり帰れてないんだ。
あー一樹も心配してるよな絶対。多分今頃警察が騒いでるに違いない。
オレが刺された場所にはそれなりに血が流れてるし朝になれば誰かが警察に連絡してるに違いない。
まさかあいつがあの血を洗い流すなんてことはしないだろう。
そこにオレが帰ってこないとなれば警察がオレのDNAとか調べてその血がオレのものってことが判る。

「…死亡扱いか」

何らかの形で事件に巻き込まれた、ってことになるよなぁ…あぁ今頃オレの顔とかワイドショーで持ち切りなんだろうな。
親に捨てられ施設で暮らしながら事件に巻き込まれた狩野慧。
こんな良いネタが上がらない訳がない。めちゃくちゃ今気分がブルーになった。

「ちっ…」

煙草を取り出して残り半分ぐらいしかない煙草をくわえライターを擦って火を付け煙草を近付けた。

「慧!!」

「!?」

「何をしているのですか!?」

口にくわえている煙草を取られ物凄い顔のマクゴナガル。

「これは何です?」

見たらわかるだろうと思いながらもオレに答えさせるのが流石教師といったところか。

「…煙草。向こうじゃ皆(ある程度の不良は)吸ってた」

「これは貴方みたいな子供が吸って良い物ではありません!!」

没収です!!と手に持っていた煙草も取られてしまった。最悪だ!!
これから煙草を吸うなと?機嫌が一気に悪くなった。ムカツク。


「…そんな顔をしてもこれは渡せません。さぁ医務室にお戻りなさい」


あぁもう!!と医務室に戻るときに怒りに任せて壁を殴ったら傷口が割れた。本当に最悪だ!!

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あきゅろす。
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