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4.魔法使い
空になったグラスをテーブルに置くとダンブルドアは「随分喉が渇いておったみたいじゃの」とまた杖を振って紅茶を継ぎ足した。

紅茶を飲んだからか、喉のイガイガが軽くなった気がしたが今思うとかなり喉が涸れてる。
自然と喉をさわって1回咳をすると身体の痛みに目をつむる。
あれだけ叫んだんだ無理もない。
疼くまるオレにマクゴナガルさんが背中を摩ってくれた。

「…すみません」

「謝る必要はありません」

「聞きたいことは山程あるんだけど此処どこ?病院…?」

「ここは病院ではありません。学校です」

「学、校?」

「ええ。ホグワーツ魔法学校です」

「ホグワーツ…魔法学校!?」

ホグワーツの単語を聞いて雷に打たれたような衝撃だった。

「先程のポットが浮くのをご覧になったでしょう?私達は魔法使いです。
言葉がわかるようになったのも魔法です」

「魔法…」

「魔法の話は置いておいて、まず最初から説明しようじゃないかのぅ、ミネルバ。
慧、君は10日前に禁じられた森で発見された。酷い怪我じゃった。
治療をして、今までずっと眠っておった」

「10日前…?森…?オレ、森に居たの?」

10日間も意識不明だったのにも驚いたが森にいたことの方が驚いた。

「そうじゃ。もう少し君のことを見つけるのが遅れていたら危なかった。
何故あの様な場所でそんな怪我をしたのか話してくれんか?」

「最近通り魔が出てて、友達と遊んでた帰りに駅に向かってて、その通り魔に遭ってナイフで刺された。
逃げようとしたけど何回も刺されて…それから意識が飛んで覚えてない…なんで森なんかに…」

マクゴナガルは顔面の血が引き青い顔でオレの話を聞いていた。ダンブルドアは眉間に皺を寄せている。

「駅の場所はわかるかの?」

「日下部」

「日下部…?」

「え?日下部だ日下部。東京の結構大きな駅だけど」

「慧、貴方まさか日本に居たのですか!?」

「だってオレ日本人だし…!?」

そこではっとした。ホグワーツなんて日本には無い。

「ここはイギリスですよ!!」

マクゴナガルが悲鳴の様に声を上げた。

「イギリス!?」

もうオレはキャパ越えした。当たり前に考えれば日本語が通じない時点でおかしいじゃないか。
世界を越えて、国まで越えちまったのかオレ。っていうかこれ密入国じゃね?
ということは正規の方法では日本に帰れないしこの国からも出られない。

「魔法で日本に送ってくれませんか?日本に着いたらあとはどうにかなるんで」

「もちろんだとも。君のご両親はきっと心配しておる」

その言葉に今度はこっちの顔が青くなるのを感じた。しまった、墓穴を掘った。
帰るってどこに帰るんだよ。
同じ日本でもあの施設があるのかわからないし何よりオレは本来ここに存在しない。

「慧?」

「あ、えと…」

頭は完全に考えることを放棄した。
必死に何か言おうとするも言葉が出ず黙ってしまった。

「話してもらえんかの?ひとりで考え込まんで一緒に考えよう」

「オレ…、(この人を信用、していいのか?)」

そんなオレの考えを読み取ったのかダンブルドアは微笑みながら言った。
「儂ら大人を信じて欲しい」



「オレ、この世界の人間じゃない」



もうこの口は閉じなかった。
ダンブルドアとマクゴナガルは真剣に話を聞いてくれた。
この魔法界の学校を舞台にした本が存在し、所謂パラレルワールドのこと、こちらの日本にはオレの存在して良い場所が無いことを。

「ふむ…ならホグワーツに入学してみんか?」

「ダンブルドア!!」

とマクゴナガルがダンブルドアの名前を叫んだ。
「あぁアルバス、彼はマグルなのですよ!?」

「そうだオレは今まで生きてきた中で1回も魔法なんか使えたことはない!!」

「いや、ミネルバ。彼はちゃんと魔法を使っておる」

その言葉に2人は固まった。

「魔法なんて使えたら自覚ぐらいある」

「じゃあ慧、君はどうやってイギリスまで来たんじゃ?」

「それはトリップしたから「君は無意識のうちに姿現しをしたんじゃよ」

世界を越えてしまったがのと付け足して。

「オレが魔法を使った?」

「その通りじゃ」

「…入学させてくれるのは有り難いがオレには金がない。…やっぱ日本に送って下さい。
児童養護施設探してそこに入ります。」

「でも貴方を証明するものが無いのに」

「出生届けを出されていないということにすればいい。両親は蒸発したことにすれば施設に入れる。まぁ当分警察のお世話になると思うが」

「よくそこまで考えついたの」

「半分は本当のことだ。昔から施設に住んでるから問題はない」

「…子供がお金の心配をせんで良い。君が卒業するまで儂が面倒見よう。」

「卒業までって一体いくらかかると思ってんだ。見ず知らずの他人にそこまで「慧よ」

真っ直ぐな瞳と目が合い目を離したかったけど離せなかった。

「幸いにも儂には君を卒業させるだけの貯えはある。遠慮はしないで欲しい、儂が勝手に君に渡すだけじゃ。

ミネルバ、彼は何年生がいいかの?やはり1年生からが「ちょっと待て」

「どうしました?」

「1年?1年は11歳だろ!!オレは高1、今は15だが再来月の12月で16だ!!」

「なんと!!」
「まぁ!!」

と驚きの声が上がる。

「待って下さいダンブルドア。慧、再来月の12月とはどういうことですか?今は7月ですよ」

「は?」

「「…………」」

「どうやら時間の軸も違う様じゃの。しかし慧が16とは。そのわりには少し小柄すぎんか?」

「何言って―確かに日本人は童顔小柄って言われてるけど日本では平均並だ!オレの身長165センチだぞ」

ダンブルドアとマクゴナガルはお互いを見合った。
なんだそんなにおかしな事言ったか。

「慧、起き上がれるかの」

マクゴナガルの肩を借りてべッドから立ち上がりマクゴナガルの横に立つ。

「…マクゴナガルさん、失礼ですが身長2メートル超えですか」

オレの頭はマクゴナガルの肩下だった。

「私はそこまで大きくありません」

「そこに鏡があるから見てみなさい」

姿見の前に立つと絶句した。

「これ、…オレ?」


鏡の前にはマクゴナガルとオレ。
しかしその姿はあまりにも今年16になるとは言えない。小6…いや中1(小学生なんてそれは絶対にない!!)ぐらいのオレだった。

「ちっさくなった…!?」

身体は子供、頭脳は大人のキャッチフレーズが頭を過ぎった。


「しかしその姿では15…16歳は無理だの。
押し通して13歳、3年生じゃ」

「……じゃあ良いよ3年で」

「でも基礎が分かっておらんし…「勉強はどうにでもなる。自分で言うのもあれだが高校では結構上位だったし」

「2年間の勉強は大変じゃよ?」

「大丈夫だ。」

「では、3年生に編入、という形で良いかの」

「ありがとうございますダンブルドア…さん、「儂の事は慧の好きな様に呼びなさい。どうやら君は敬語を使うのは苦手の様じゃの」

右目でウインクされでは、ダンブルドアと呼んだ。

「ハリーは今、何年生なんだ?」

「ハリー?」

「何惚けてんだ、ハリーだよグリフィンドールのハリー・ポッター!
!マクゴナガル先生あんたグリフィンドールの寮官だろ」

「慧少し落ち着きなさい。
ハリー・ポッターと言う名の生徒はグリフィンドールにいませんよ」

「ゴホッ!!」

「慧!」

落ち着く様に言われたので紅茶を飲んだ瞬間吹き出した。
紅茶が器官に入って噎せ咳込むが咳をする度に激痛の無限ループで死にそうになった。

「ハ、ハリーがいない?卒業したのか!?」

「入学もしとらんよ」

「ちょっと待て、一体今西暦何年なんだ!?」

「1974年です」

「74年…!?」

もう無理だ。頭爆発する。

「ハリー・ポッターは居ませんがジェームズ・ポッターはグリフィンドールに所属しています」

「ジェームズが…?」

倒れそうになりマクゴナガルが支えてくれた。

「親世代かよ…!!」

「慧はジェームズの事を知っておるのかね?」

「オレが知ってるハリーはジェームズの息子だ」

もう時代背景がぐちゃぐちゃだ。オレは2010年代の人間でハリーは今から約20年後1990年代の人間。オレからしたら30年以上も前の時代だ。


「ダンブルドア、そろそろこの子を休ませたいのですが」

「おぉ、ポンフリー薬が出来たのかね?そうじゃの慧。
君はまず身体を治す事に専念しなさい」

「…わかった。ダンブルドア、本当にありがとう」

「お礼はマダム・ポンフリーに言いなさい。君を助けたのは彼女じゃ」

「助けてくれて、ありがとうございました」

彼女は微笑みながら本当に良かったと言いゴブレットをテーブルに置いた。

「全部飲んでください」

「毒薬か」

ゴブレットの中にはドブの水みたいな灰色の液体に顔が引きつりゴブレットをマダム・ポンフリーの方に移動させた。

「ちゃんとした薬です。飲みなさい」

マクゴナガルに背中を押され覚悟を決めて一気に流し込んだ。

「まっず!!」

この世の物とは思えない味の酷さに隣にあった紅茶を飲み干した。

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