12.オレマジでこいつらと仲良くなんかできねぇ
「(魔法史って何でこんなに暇なんだ)」
日本史はまだ興味があったがオレは世界史はかなりやる気がなかった。
何世とか何で同じ名前にするんだよと散々思ったことだった。
あの一定なリズムの声がかなり睡魔が来る。
あれ睡眠の魔法掛けてんじゃねーの?
時々目を閉じたりノートを取る時に起きたりして羽ペンを走らせていた。
コツン、と頭に何かが当たると小さく折られた羊皮紙だった。
「(…手紙?)」
誰かに渡す相手に届かなかったのだろうと思い開かずにそのままにしておいた。
どこでも手紙回しはあるもんなんだよなー。オレもよく女子の回したわ。ぼーっとノートを取ったりしてるとまた頭に羊皮紙が当たった。
「(またかよ)」
若干イラっときたが放っておいた。
コツン!
ガン!!と左手で机を叩いた瞬間元々寝てたりしていた生徒が皆覚醒した。ビクゥ!!と肩を上がらせた生徒を見てちょっとウケた。
「Mr.狩野、何か?」
「いいえ、何も」
そう言うとまた授業が再開された。
今度また羊皮紙が飛んで来たが頭には当たらずに机の上に落ちた。
「いい加減に…」
いい加減にしろ!!と叫ぶところだったが羊皮紙に君にだよ!、と書かれていた。
「(オレ宛て?)」
君に話すことがあるんだ。授業が終わったら話したい
名前を見れば悪戯仕掛人のメンバー。
「(オレは話すことなんかねーよ)」
しばらくすると終業のチャイムが鳴った。
わらわらと出ていく生徒の波に乗って教室を出た時にジェームズ・ポッターに腕を掴まれた。
「手紙、読んでたよね?」
読んでた、ってお前どんだけオレの事見てたんだよ。
「何?」
メンバーを見た時に1人足りなかった。
「茶髪はどうした?」
「リーマスはお母さんのお見舞いに行ってるんだ」
あぁ。今日か近いうち満月なのか。
「ふーん。で用件は?」
「そうそれ!君いっつもどこ探してもいないんだもん。用があるのは彼さパッドフット!!」
ジェームズの後ろにはシリウス・ブラックがいた。
「………」
用がある、って言ってんのにあいつは黙ったままだった。
何この空気気まずいんだけど。
「…用がねーならオレは行く」
オレもこの空気に耐えられなかったので3人の横を通り過ぎたときにシリウス・ブラックに肩を掴まれた。
思わずバシッと手を叩いた。その行動に3人は驚いた表情をするがシリウス・ブラックはすぐに荒い声を上げた。
こいつオレと同じで沸点低いからな。
「オレに触んな!」
「何だと!?」
ブラックは杖を抜いて攻撃しようとしたのかそれはまずいだろとポッターとペティグリューはブラックを止めに入った。
「離せジェームズ!!あったま来た!!」
「落ち着けパッドフット、うわっ!!」
ブラックに跳ね飛ばされたジェームズは体制を整えられずにこっちに倒れてきた。
オレも一緒に巻き込まれて床に倒れる。
「痛た…ひどいじゃないかシリウス!」
「痛ってー!!ポッターどけ!!」
ポッターを蹴り落として立ち上がり落ちた教科書を拾った。
「マジお前らうぜぇ」
そのまま変身術の教室に向かった。
変身術の授業が始まり始めは話が中心だったがノートを取る時に腕が痛んだ。
「(ちくしょーあの時か…)」
左手が使えないのでまぁ右でも問題ないかと文字を書いていったが実技に入った時が問題だった。
「まず復習で鳥をゴブレットに変えてもらいます」
周りで何人かはうまくいき(ジェームズとシリウスは完璧にできており乾杯!とゴブレットを鳴らしていた。ピーターの出来は微妙)自分も杖を振った。
「うわ」
結果はなんとも中途半端になってしまった。
もう一度杖を振ってやり直すが多少マシになっただけだった。
くっそー周りがクスクス笑ってやがる。
「(今回の授業はムリだな)」
ちょうど席を見回っていたマクゴナガルが慧の席に来た。
「Mr.狩野、あなたは左利きではありませんでしたか?」
「右利きですよ先生。どうやら変身術は苦手みたいっすね」
周りがまだクスクス笑っている中、ポッターとブラックがゲラゲラ笑っていた。
下手くその奴らでもまだオレのよりはるかにマシだ。
「狩野」
「痛った!!」
マクゴナガルがオレの左手を上げた瞬間痛みが走って声を上げた。
しまった、と恐る恐る顔を上げると…うわーお段々眉が上がっていってるよ先生。
「狩野!!今すぐに医務室に行きなさい!!」
「…医務室に行く程「杖も上げられないのがどこが大丈夫です!?」
「わかりました」
授業中断してるし周りが騒ぎ始めたので席を立って医務室に行こうとしたらマクゴナガルが後ろに座っていた女子に一緒に着いていくように言った。
「医務室ぐらい一人で行ける」
「良いから一緒に行きなさい!!」
「狩野行きましょう」
教室を出て2人で医務室に向かう。無言で。
うわー仲良くないし(ていうかほとんどの奴と話をしたことがないが)
「狩野腕大丈夫?私さっきポッター達と揉めてたの見たのよ」
「あぁ…ってお前新学期の日にブラックとのいざこざ止めてくれた子だよな?」
今ちゃんとこの子の顔を見たけど多分そうだ。赤毛だったし。
「あら覚えててくれてたの?名前まだ言ってなかったわよね。私リリー・エバンズよ、よろしくね」
「リリー、エバンズ?」
「ええ」
「(ハァー…どうしてオレはこうも重要人物と関わるんだ)」
ため息を出すとリリーに大丈夫?腕痛いの?と首を傾げながら言われた。
かわいいなぁオイ。これはあのジェームズもスネイプも好きになるわ。
「何でもねー」
医務室に着くとオレの顔を見たマダム・ポンフリーが急いでやってきた。
「慧!どうかしたのですか!?」
「…腕の傷開いた」
慧の言葉を聞いた瞬間にマダム・ポンフリーは薬を取りに行った。
制服のシャツをめくると白い包帯が赤くなっていた。リリーはそれを見ると小さな悲鳴を上げた。
「…エバンズ、後ろ向いてろ」
リリーがコクリと頷いて後ろを向くと慧は腕の包帯を解いた。
「………(うわーぱっくり)」
マダム・ポンフリーが戻って来ると薬を塗って包帯を交換してくれた。
「また夜に来なさい」
「ありがとうございました」
制服を整えてローブを着るとリリーに声をかけた。
「…終わった。教室に戻るぞ」
「え、えぇ」
教室に戻るときもしばらく無言だった。
慧は肩を回したり腕が上がるか確認をしていた。
「ねぇ狩野、その腕前から怪我をしていたの?」
「(やっぱり聞いてくるよな)あぁ」
「だから飛行術の授業見学してたのね!周りはほうきに乗れないとかポッターとブラックは狩野のこと高所恐怖症だとか言ってたのよ!」
どんな憶測が飛び交ってんだ
「高所恐怖症じゃねーよ。まぁ…ほうきに乗ったことないから乗れないのはあながち間違っちゃいねーけど」
「ほうきに乗ったことないの!?」
「…悪ぃかよ」
「ううん、ちょっとびっくりしただけ。日本ってほうきはないの?」
「知らねぇ。オレはほうきよりバイク派だ」
あぁ原付きに乗ってたのが懐かしく思える。免許持ってねぇけど。
「え、じゃあ狩野ってマグル生まれなの!?」
「…さーな。エバンズ、…ありがとな」
「気にしないで」
教室に着いたので話はそこで終わりお互い席に戻って行った。
リリーの笑顔はフツーに可愛かった。
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