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至宝の小説
『捏造館』の熊さんからお誕生日で頂いた素敵小説。



白のフリル付きエプロンを装備して準備は万端。

苺は既に洗って扱いやすい大きさに切ってある。
熱した水にグラニュー糖を入れて冷ませばそれはシロップに。
と、オーブンがタイム通りに音を鳴らして合図する。扉を開ければ香ばしい匂いと共にこんがりときつね色に焼かれたスポンジケーキが顔を出す。
スポンジケーキを二枚にスライスし、切り口に刷毛で先ほど作ったシロップを塗る。
これで一段落付いた。続いては生クリームだ。
ボウルに生クリーム、そしてグラニュー糖を入れて泡立てる。シャカシャカと音を立てて角を立たせる。
温度が冷えてるのを確認し、先ほどスライスしたスポンジケーキの間にクリームを塗り込んだ。
更に苺を敷き詰め、次にスポンジケーキの上段を重ねる。
生クリームで上面と側面を綺麗に塗り、更に残りのクリームをを絞り袋に入れてケーキの回りに絞り飾る。
最後に飾り用に取り分けていた苺を乗せれば―――――

「苺のショートケーキの出来上がりだ。どうだ獄寺。オレの腕前は」
「…お見事です」

獄寺がやや呆然としながらも、オレの手作りケーキに拍手を送る。うむ。もっと惜しみない拍手を送るといい。

「だから全部任せろと言っただろ。オレを誰だと思ってんだ? ケーキ作りなんて朝飯前だ」
「はい…お見逸れ見ました」

どうも獄寺はオレが料理が出来ない奴だと思っていたみたいだが、それは大きな誤解だ。大体料理なんて暗殺と比べたらちょろいもんだ。何比べる対象のベクトルが違う? まぁ気にするな。
しかし、まぁこの状況を使わない手もないか。

「どうだ獄寺。料理上手で家庭的なオレはとても可愛いだろう? 無論料理だけでなく掃除洗濯裁縫害虫退治と何でもござれだ。お買い得な一品だな。オレが欲しくなっただろう?」
「…ご自分を物扱いするのはどうかと思うのですが…」
「お前が望むのなら、オレはお前の物にすらなるんだがな」
「…別に望んでないのでやめてください…」
「なんだつまらん」

でもまぁ、獄寺が望んでないのなら別にいいか。
オレは我ながら中々に出来たケーキをナイフで切り分け、そして更にフォークで一口サイズに掬い…獄寺に突き出す。

「ほら獄寺。あーんをしろ」
「いきなり何するんですか!?」
「馬鹿野郎。恋人同士に手作りケーキっつったらこれだろうが」
「その知識間違ってますよ!?」
「うるせぇ。間違っていようがいまいがオレがこれをしたいんだ」
「…いきなりケーキを作り出したと思ったら、これがしたかったんですか…?」
「いや、今日月虹の誕生日らしいから…」
「はい?」
「いやなんでもない。いいから食え。味だって最高だぞ? それともオレが味見してないからって不安なのか?」
「いえ別にそんなことは…」
「そうか…それなら仕方ないな。じゃあ味見をしてやるから、お前がオレに食べさせるんだ」
「それがしたいだけですか!?」
「当然じゃねぇか」

きっぱりと言い放つと、獄寺はがっくりと項垂れた。







…というわけでお誕生日おめでとうございました!
べ、別に忘れていたわけじゃないんだからね!! 今月ってことは覚えてたんだからね!!
…すいません…





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あきゅろす。
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