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僕の灯を君に、十六夜。
第八夜∞再生の塔
手を 握り締めて。
一歩ずつ 確実に。
階段を踏みしめてく。


昼のチャイムが鳴った。
私達は屋上へと続く階段を上ってく。
開け放たれた鉄扉の向こうは、いつものように
私達専用のカフェが広がる。


「ハイ。」


屋上の床に座って、壁を背もたれにくつろいで居ると、
彼が私にソレを差し出した。
バナナボートが、そこにあった。


「お前さ、今日誕生日じゃん?オメデトさん」


そう言って、彼は満面の笑みで微笑む。
忘れられてたのかと思っていたけど、覚えててくれたんだ…
私の誕生日…。


隣に居るだけで体温まで伝わってきそう。
あなたが微笑むから…よけいに、伝わるよ…
「ありがとう」って上手く言えなくなっちゃうよ…


「…でも、バナナボートが大好物なのはそっちでしょ?」


的外れな言葉をつき返して、
私は包み紙を剥いでゆく。
バナナと生クリームの甘い香が心地良かった。


「だからさ、俺にも食べさしてよね」


そう言って彼は私の肩に寄り掛かると、
生クリームを指ですくって私の口元につける。
「ちょっ…何すんの?」
そんな言葉も無視して、次々と生クリームが私の口元に運ばれる。
まるで小さな子みたいに、私の口の周りはクリームだらけになった。


「食べさせてって言ったもんね」


そう言って彼は、私の口元のクリームを綺麗に舐めた。
溶ろけそうな程、甘い感覚の中で、
クリームの甘い匂いだけを頼りに、
いつしか私は彼を抱きしめて居た。


クリームが全て無くなった頃。
私達は初めてキスした。
ファーストキスは甘い味がして、
私達はその後、時が止まったかのように無言で居たけど、
肩にもたれ掛かった彼の頭がいとおしくて。


「じ…自分だけ…食べちゃうなんてズルいんじゃない?」


「え?」と言って、彼がこちらに視線を向けると同時に、
私はその唇にクリームをつけてキスした。
今度はさっきよりもちょっとだけ、長く。


「仕返しだよっ」


二人して、笑った。
これから新しい事沢山だよね。


手を 握り締めて。
一歩ずつ 確実に。
階段を踏みしめてくんだよね。


「ありがと」

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