僕の灯を君に、十六夜。
第七夜∞傷痕
白く棚引く雲が、いつしか橙色に染まっていた。
彼の部屋の窓から差し込む光は鮮烈に、
あたしたちを夕闇へと導いているかのようだった。
「消えちゃったんだあ…。」
そう言いながらあたしは、
自分の胸の上部を指差す。
高校生になってからというもの、
放課後はいつも彼の部屋に来て、
あたしたちは確かめ合うのが日課。
愛を。
全身で。
確かめて。
「ホントだ」
毛布に包まりながら、彼はソレの跡を見た。
「消えちゃってるね、キスマーク」
彼はいつも私のカラダにキスマークを刻む。
忘れない為。
愛の証拠。
「じゃあ今日は、違うトコで。」
そう言って彼は、あたしの左腕を掴む。
優しく手を握ると、薬指にキスマークをつける。
赤いリングの形。
「エンゲージ?」
冗談混じりで言ったけど、彼は結構本気だったらしく、
顔を赤らめて見つめ返した。
それは夕陽のせいじゃないよね?
「あたしも」
彼の左手を握って、薬指にキスマークをつける。
赤いリング形のキスマークは、夕陽に重なってさらに赤みを増していた。
愛を。
全身で。
確かめた後の、
忘れない為の、
愛の証拠。
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