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お前に溺れた俺の蜜
フォービドゥン
小春日の昼下がり。真っ青な空には雲一つ無く、風は止む気配すらない。
騒々しい街中を避けて、俺らはあの川へ向かう。
川流しが行われる川だ。
そして、あの日の、思い出の川…。
そのままのあの日の情景。


二人、何気なく手を繋いで、土手の上から川を眺めていた。
ルシィの手は小刻みに震えていた。
明日ここで、川流しをするはずなのだから、無理は無い。


澄みきった川は、午後の太陽に促されるように、
キラキラ
キラキラ
水面が光り輝いている。
こんなに綺麗な川で、あんなにも無残な儀式が行われるのかと思うと、
俺は吐き気にも似た憎悪を感じた。


「お兄ちゃん、紙飛行機!」
突然目の前に灰色の紙飛行機が飛び込んできた。
道端に捨てられた薄汚れた新聞紙を拾って来たルシィは、いつの間にか紙飛行機を作り上げていた。
俺はいつルシィが手を離したのかわからなかった。


なんだ。
ちゃんと、覚えていたんだ。作り方…


そして、ルシィは薄汚れた紙飛行機を空高く飛ばした。


キラキラと太陽の光を浴びながら、
ふわふわと醜い雛鳥は宙を舞う。


キラキラ…
ふわふわ…


どこか切ないその光景に、俺は独り言のように呟く。
「お前、処女じゃなかったら神に捧げられることは無かったのかな」


隙をついて出た言葉に一瞬はっとしたがもう遅い。
伝えたい言葉はいつも僕の奥深くで空回りする。
一つの螺子を失ったからくり人形か、又は歯車を失ったオルゴールのように。


そんな問い掛けに、笑いながら冗談混じりに答えるはずだと思ったルシィは、
真剣になって言った。
「あたしは、もっとずっと前から汚れてる…神へ捧げられるのは躯だけ。」


くるくると円を描きながら、緩やかに飛ぶ紙飛行機を見ながらルシィは言った。
空を見上げるルシィの姿は、あの夢の中のルシィよりも
何倍も綺麗に見えたのは…。
ルシィのその言葉の真意も解からず、俺はさらに問いただす。


「お前は神を信じる?」


俺も、ルシィが見つめるあの紙飛行機を見上げながら。
ルシィは何も迷っている様子も無く、即座に答えた。


「あたしには、お兄ちゃんしかいないじゃない?」


神様よりも大切なお兄ちゃんが。
生まれた時からずっと一緒だったお兄ちゃんが。


もうそれ以降の言葉は耳には入らなかった。
芝生が風になびいて、ざわざわと音を立てる音しか感じられない。
驚いた俺は、即座にルシィを見た。
ルシィもまた、俺を見つめていた。
ルシィの赤く火照った頬。
本当なのか?
ルシィも俺を…?
神に逆らっても、俺を想ってくれるの?

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