お前に溺れた俺の蜜 PELSONA 晴れた日だった。多分。 朝靄の中、君の姿を探していた。 前方にも後方にも何一つジャマな物は無くて、かえって不気味だった。 一晩中ずっとここで、同じ景色を見ていた。いつもと同じで、何も変わりはしなかった。 君ハ、モウスグ死ニニ行クノ? そういえば、先程まで、長い長い夢を見ていた気分だった。もしかしたら、眠って居たのかも知れない。 未だ、幼い頃の、僕。そして、真っ赤な君。 あの頃は、無邪気で、日が暮れても遊びには困らなかった。 できるなら、あの頃に戻りたい。 そうすれば、君も、この使命から解放されるのに。 そして、僕も。 僕は、荒れた大地を踏み締め、空を仰いだ。 赫トンボが大空を駆けめぐり、僕の内までも染め上げた。 「空を飛べたらいいのに・・・・・・」 君を連れて、どこか遠くの地へ行けるのに。 もう、苦しまなくて済むのに。 そんな事を思っていた。ふと、気を緩めると、嗅ぎ覚えのある匂いがした。君の匂いだ。 いつかの時代・・・まだ平和だった時の、ROMANCEという香水の匂い。君のつけている香水の匂い。 あの頃はまだ良かった。 そんな平和な時代がここにも存在していたのかと、信じられない位だ。 君の匂いのする方へ目を向けると、やはり君がいた。 独り、遠くを見つめる君は鋼鉄の意志を持ち、キラめく瞳で最後の今日という日を見納めていた。 まだ少し肌寒い朝の風は、君の長い髪の毛をしなやかに運んでく。 もうすぐ死ぬというのに、君の眼差しは自信に満ちていた。 それがとても勇敢に見えたのは・・・・・・。 [*前へ][次へ#] [戻る] |