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お前に溺れた俺の蜜
PELSONA
長い飛行機雲が続く空だった。

真っ青な空の下、隣の国まで続いている道を走っていた。

僕が走り去る度、道脇の秋桜が

キラキラ

キラキラ

僕と同じ位の背丈の花は、風に吹かれてゆらゆらと揺れる。
与えられた命を、只ひたすら真っ直ぐに受けとめて。風が吹けばその波にのまれて、漂って・・・。

僕はその花をじっと見ていた。

無数に拡がる桃色の絨毯は、ちっぽけなこの僕を今にも食べてしまう勢いで見つめ返す。
午後の太陽までもが僕を見つめ、行き場を失った僕はどうしたらいいのか解からず
再び走りはじめた。

ハーハー息を切らしながら。
秋桜の中何かを求めて走る。

僕は、君を探してたんだ。

どの位走っただろうか。

未だに続いている花の道。きっと、果てしなく、どこまでも、隣の国までも続いているのだろう。
その道を走る僕。
入口はあっても出口のない迷路のような道が、僕の人生を物語っている。
きっと、これから先、いや、もう僕が誕生している時から、今居るこの道よりもっと

ずっと、 ずっと、 大きな道の上、

ずっと、 ずっと、 小さな僕が、出会い、別れを知って歩いて行く。


振り返ると、秋桜の細道は真っ赤な夕陽に包まれていた。
赫トンボが秋桜の上を跳ね回る。その打撃を受け、秋桜は微かに揺れる。
突然の来訪者を拒むことも出来ずに。

その光景に見とれていた。
夕陽が顔に照ると、漸く思い出した。

帰る時間だ。

つい遅くなってしまった。何と言い訳をしようかと悩み、もと来た道を振り返った。

だが、再び歩くことは出来なかった。そこには赤に染まった君が居た。
夕陽を全身に浴びて、じっと僕を見つめて居た。
君の透き通る様な白い肌が、真っ赤な夕陽さえも、その全身を通して、血管が浮き上がって見えた。

その時の君の姿は、僕の脳細胞にべっとりこびり付いた。

余りにも、それが印象深く、幼い僕は思わず走り出してしまった。
君の横をすり抜けて、秋桜の一本道を全力疾走で駆け抜けた。
後方を向かないように注意して、夕陽とは反対の方向に、赫トンボと一緒に、
「同じ空の下に生まれて良かった」と感じた。

僕の火照った赤い頬は、夕陽の影響でまたさらに赤くなっていた。
後方を向かないように注意して、夕陽とは反対の方向に、赫トンボと一緒に、

走った。どこまでも。空の彼方まで。

後ろで、君が何かを叫んでいた。

僕は、それには気づかず、只、夢中で走り続けた。

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あきゅろす。
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