〜宛メメント
クレド
背はあたしと同じくらいだが、筋肉は程好くついているようで、
半袖パーカーから覗かせた腕や身体の厚みといい、文句のつけようの無いガタイの良さだ。
だが、それとこれとは話はベツで、
あたしは今すぐにでもここを立ち去りたい衝動に駆られていた真っ最中なのだ。
こんな尻軽なんかにかまうのは時間が惜しい。
煙草の煙をソイツの顔面に一気に吐き出しながら、
それと同時に捨て台詞を言い放つ。
「ウザイ。」
そう言い終えて、さっさと帰ろうと立ち上がったのと、
ソイツがあたしの二の腕を掴んだのはほぼ同時だった。
「俺、ここじゃクレドってIDで通ってんだ。
今日たまたま遅れて来ちまって、ハイなり損ねなんだよね。
つまんねーし、抜けださねー?」
ミラーボールの逆光。
ハイになった不必要な人間たち。
イカれた喘ぎ。
裸の弔い。
それでもクレドと名乗る男の指先からは、違う何かを感じた。
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