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〜宛メメント
不調和


キシっ…


沈むソファ。

べとつく髪の先から仄かなブランデー。

吸い込まれる、その瞳。


空気が制止した中で
あたしは一ミリだって動く事が出来ずに、呼吸さえ侭ならない。


「望むなら、抵抗はしない。続けろよ。」


ユヅキはその艶やかな低音で告げる。
でもあたしの身体は冷えて凍死した稚魚のよう。


忘れたい。

怖い。

暗くて冷たいこの世界は

あたしにとって苦痛だから


快楽主義者ね。
それで忘れられると、甘い蜜を味わっていた筈なのに何故、今それが出来ない?


「…出来ない。」


口をついて出た言葉はチョビコらしくない。
自分自身に嫌悪感を抱きながらも、身体が拒否している不思議な感覚。
こんな事、クレドの時以来だ。


ユヅキは、馬乗りになって制止しているあたしに微笑を浮かべながら、「そうか」と呟いた。
その侭、ユヅキは煙草をふかす。


吐き出される白煙は、メンソールではない。
ユヅキがクレドと違うと、唯一知る事の出来る匂い。


やはりあたしは囚われた蝶なのね。
逃げても逃げても、記憶の中のクレドは色褪せる事無く確かにそこに存在する。
逃げ惑うあたしはまるで馬鹿ね。


クレドの最後の記憶は裏切り。

それでもあたしは…


ねぇ、クレド。
教えてよ。


本当は…




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