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〜宛メメント
タオル
ショーウィンドウ越しに目を輝かせるあたしを見て、ユヅキは微笑を浮かべると、ふうと煙草の煙を吐き出した。


「後でゆっくり見せてやるから、こっち来い。」


そう言って、腕を引っ張られ脇道から階段を上った2階に連れて行く。
扉を開けるとそこは、事務所らしいテーブルやソファが置かれている、1階の店舗とは全く別の、殺風景な空間だった。
ユヅキは赤LARKをふかしながら、部屋の一角を制している長ソファに深々と腰掛けた。


「君も座りなよ。」


あたしは黙り込み突っ立った侭、静かにユヅキを見詰めて居た。
それに見兼ねて「ああ」と言葉を漏らすと、タオルを持って来て言った。


「あっち、シャワーあるから使って。狭いけど。」


押し付けられたタオルからはお香の匂いがしたから、きっと商品だ。
こんなに優しくされたのは、クレド以来だ。
ふと、そう思った直後、途方もない嘔吐にも似た感情が込み上げて来た。


…またクレドの事?


いっその事、何もかもがクレド中心に廻るあたしの脳下垂体を解剖して取り出して欲しい。
わからない、
わからない、
そればかりが廻る前頭葉を、粉々にして欲しい。


腕に抱いたタオルにぎゅうと力を入れた時。


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あきゅろす。
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