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〜宛メメント
救済


バン!



その時、上座の方から大きな物音が聞こえたかと思うと、男は凄い形相でこちらを睨みつけていた。
テーブルに勢い良く叩き付けられた男の手は、わなわなと微かに震えている。


「いい加減にしてくれよ、酒が不味い」


黒髪の長髪。白い肌をした、世に言う美形の男がこちらを見つめ怒鳴った。
まるでホストのようなそんな男が、似合わない上座に座っている事も不思議なのだが、あたしはそれとはまた違う違和感を感じていた。
染みるアルコールに耐えながら方目を開けて見ると、確かDOLLSに飲みに来た客で…


「でもこの女…」


あたしに怒鳴りつけてきた張本人が言葉を失うと同時に、あのホスト男があたしの腕を引っ張っる。


一瞬、あの時の光景を思い出す。
引っ張られた左腕。
それに付いて行く事しか許されないあたし。
不覚にも、この男の手は、クレドのように温かで。


腕を引っ張られながら部屋から出ると、宴会場の中からはまた騒ぎ声や笑い声が聞こえる。
その中に、「組長があの女シメてくれるぜ」等という声が、幸か不幸か地獄耳のあたしの耳に入り、身をぞっとさせた。
頑なに身を縮込めていると、男はようやくそれに気付いたのか、腕を離し煙草に火を付けた。


「君さ、カクテル作る子だよね。俺の事、覚えてない?」


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あきゅろす。
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