〜宛メメント
仮面
「チェーンジ!チェーンジ!」
大声でチェンジコールを歌われても、耳が痛くなるだけだ。
あたしは即座に「すみません」と言い直ったが、客は気が済まないようで、またあたしの顔面にブランデーのシャワーを浴びせた。
「謝って済むと思ってんのかよ!こっちは金払ってんだぞ!!」
更に大声で怒鳴る客と、キャアキャアと騒ぎ立てるコンパニオン達。
アルコールが目に染みて、謝るのも苦痛になってきた。
それと同時に、錯覚にも似た忌々しい呪縛が、脳裏を霞めた。
あたしは、何?
仮面を被ったあたしを、あんたはお望みなの?
あんたにへらへらして、少しの色気を見せるような女が、お望みなんでしょう?
そうよね。
誰も本当のあたしなんて、要らないかもね。
本当のあたしなんて、邪魔なだけだもの。
クレドの事を思い出すだけで泣きそうになる。
羽根を優雅に伸ばしても、自分の毒気で殺られそうよ。
反吐が出るわ。
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