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〜宛メメント
コード



ポロン


古惚けたアパートの、質素な部屋の中に、ギターの音が響き渡る。
剥き出しのコンクリートの床の上に座り込み、あたしは只管、コードを奏でて居た。


「クレドの、馬鹿。」


ピンクから紫に入り混じるグラデーションが魅力的な、先程買ったばかりのギター。
エレキギターだが、アンプは無い。
店のおじさんは勧めてくれたけれど、あたしは機械に変えられた電子音よりも、この弦が奏でる生身の音が好きだ。
それならと響きの良いアコースティックギターを更に勧めてきたけれど、あたしが重視していたのはそんな物じゃない。


この艶やかなボディー。
弦から放たれる、滑らかな音。


それがあたしの心の奥底の、何かを満たしていく。
蜻蛉のタトゥーは笑う。


「何かに夢中になるなんて、あんたらしくないわね。」と。
違う。
夢中になんか、なってない。これはチョビコを保つ術の一つに過ぎない。
あたしは、自分を、見失いたくなんかない…


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