〜宛メメント 偽り 「ミユウには関係ないだろ。てか俺達はもう…」 そう言いかけて止めたのは、クレドがあたしの方を振り向いたから。 あたしはただ無言で、傍らに殺伐と置かれたギターを見詰め、煙草を取り出し吹かす。 その仕草のせいか、 あたしが何も言わないせいか、 それともただ心配になったのか、 クレドはあたしの元に駆け寄り、無理矢理顔を覗き込み、言った。 「起こしちゃったか…ごめんな」 困ったような、 悲しいような、 悲痛が現れ出た表情で笑われても あたしだって 泣きそうで、 それでも強がって見せる事しか、出来ないよ? 「あたし、帰るね。昨日は…、ありがと。」 瞬時に悟った事は、きっと二人は付き合っているって事。 そして昨日のクレドの言葉への疑い。 言葉も仕草も笑みも、全て偽り? 俯いた侭小走りで外へ出る際、ミユウと呼ばれた女は鼻で笑って居た。 クレドの顔を最後まで見れなかったのは、信じる勇気がないから。 厚底のドールブーツを抱えながら、素足の侭近くの河川敷へと一目散走る。 薄暗がりの橋の下で、あたしは声を押し殺して泣いた。 水面で魚が跳ねる。 遠くで、クレドの声が聴こえた。 [←] [戻る] |