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〜宛メメント
修羅場



ガタン。



突然の大きな物音に、ビクッとして目を覚ました。
まだ視界がぼやけた網膜は当てにならず、その代り耳から脳内へ伝わる音で徐々に感覚を呼び起こす。


「あんたにされた仕打ち、どう責任取ってくれんのよ!」


甲高く響く、女の叫び声。
煩わしいと思いながらも重い瞼を上げると、クレドと知らない女が玄関先で口論して居た。
黒いマスカラと付睫で縁取られた大きな眼が印象的な小柄な女は、今にもクレドに掴み掛かりそうな勢いで捲くし立てる。


「あんたのせいよ!あんたのせいであたしは…」


「いい加減にしてくれよ。お前こそ、自分がやった事の反省も出来ないの?」


当のクレドはこちらからは死角になっていて、表情を覗えない。
が、声は、あたしが聞いた事もないような苛立ったものだった。
男女のその殺伐としたやり取りから、これは修羅場かと、あたしの本能が察知する。
今時そんな事をする輩も居るのか、と関心して居た時、被害はあたしにも及ぶ。


「あの女誰よ!部屋にまで上がらせて!」


そう奇声を上げる女は、指を指してベッドに座るあたしを罵った。
あたしはお返しとばかり軽く睨み付けて返すが、よく考えるとそもそも無関係なので、すぐに視線を逸らした。



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