〜宛メメント
雪
夢の中であたしは、一面真っ白い雪の中に居た。
お気に入りのピンクのコートを羽織って、紅いリボンで髪を結って居る。
地面の柔らかな新雪を小さな掌で持ち上げ、音を立てながら丸める。
キュッ
キュッ
そしてそれを遠くへ投げる。
隣に居る誰かが、あたしの真似をして雪玉を投げる。
それに飽きると、柔らかな雪を掬って頭上に降らせる。
繰り返される他愛無い遊びに、現実のあたしは心が締め付けられた。
ああ。そうだ…
あたしは気付く。
これは幼少の頃の、幸せな思い出だ。
雪の降り頻る故郷の思い出。
それでも何か、欠けている。
その何かは、まるで頑丈に鍵を掛けているかのように、中々思い出す事が出来ない。
思い出したら駄目なの?
何で?
「何でだよ。お前が他の男と…」
これを思い出せたら、何か変わるような気がする。
それは駄目、あたしはチョビコよ。
入り混じる、あたしの中の葛藤。
お願いだからもう、楽にしてよ。
「お願いだからさ、そういう事蒸し返すなよ」
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