〜宛メメント
G線
…ギター、始めてみるのも良いかも知れない。
ねぇ、
あたしは何時までもその眼を見て居たいよ。
何でかな?さっき会ったばかりなのに、何故か懐かしい。
あたしはその瞳や髪や仕草を良く知っている気がする。
真っ直ぐで、透明な瞳。
柔らかい猫毛。
煙草を吸う仕草。
海馬にある記憶を手探りで手繰り寄せる。
あと少しで思い出せそうなのに、目に見えない何かが、それを拒む。
「ねぇ、あたし達、前に会った事、ある?」
ふと漏れ出した問いに後悔した。
クレドは目を丸くさせて驚いているようで、一瞬の沈黙を誘う。
「…ないよ」
「…そっか」
そう言い終えると、クレドは煙草に火を灯した。
メンソールの辛い匂い。
思わず酔いしれてしまう程のその姿を、誰にも見せたくない、と不覚にも思ってしまう。
そんな事を想うあたしはもはや重症だ。
こんな女々しい感情、女の子みたいに恋愛をしてしまうこの身体…考えただけでも気持ち悪い。
それでも、この気持ちを消す事は出来ない。
「…あのさ」
クレドは、数あるギターの中から白いレスポールを選びながら言った。
咥え煙草の侭、Gの音を弾くと、真っ直ぐな眼であたしを見詰める。
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