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〜宛メメント
消える
いっその事、消えてなくなってしまえればどんなに楽だろうか。
何度も手首を切りつけて血を見た事か。
何度も薬を嫌って程に呑んだだろうか。
それでもあたしは死ねない。
目に見えぬ何かに生かされているかのように。


生かされたって、何をすればいいの?
毎日必死に働いて、お金を稼いで、あたしは此の侭で良いの?
例えば誰か、大切な人が出来たとして、その人と永遠一緒に居られるの?
応えてよ…


ふと、クレドのギターに目がいく。
あたしは、無数にあるギターのうち、自分に良く似たモノを見つけてしまった。
ピンクと紫の色の洋梨のような形をしているもので、確かクレドはストラトって言っていたっけ。
ボディーにはあのメットと同じ、黒蝶のタトゥーが貼ってある。


あたしはそれを手にとって、弾いてみる。
ギターは全然興味が無かったけど、前に知り合った男からコードを教えて貰った事がある。
必死に思い出して、慣れない手付きでCとGのコードを繰り返し弾いていた。


こんな静かな朝には、Gの音が良く似合う。
わざと1弦ずつ音をずらして、あたしはその余韻に浸っていた。


ポロン


ポロロン


弾かれる弦に乗った音のように、あたしもクレドに全て吐き出せれば良いのに。
別に隠してる訳じゃない。
言えない訳じゃない。
昔から自分の胸の内を誰かに明かした事が無いから、それが普通だと思っていただけ。
辛いって良く解からなくて、知らない内に心の中に溜っていく。
何処に吐き出すかも、吐き出す術も知らなくて、
何時の間にか、それは「別に言わなくても良い事」になっていた。

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