〜宛メメント
月
仄暗い朝焼けが、やけに目に染みる。
クレドの部屋の窓から注ぐ青褪めた神秘的な光は、サディスティックにあたしを包んで居た。
昨日あれから、あたしは何も覚えていない。
きっと過呼吸になってそのまま倒れてしまったんだと思う。
まだ夜が明けない午前3時半、あたしは目覚めた。
あたしはクレドのベッドにきちんと布団をかけて横になっていたけれど、クレドは床の上で今も寝息をたてている。
クレドがベッドで寝かせてくれたんだ…
あたしは起き上がって煙草に火を灯す。
それと同時に白い枠で覆われた大きな窓を開けた。
僅かに開く隙間から、朝の冷たい空気が部屋の中に流れ込む。
心地良い薄明かりの中のキャスターマイルドがあたしの灰を充満していった。
結局、あたしはクレドに何も、話せなかったのだ。
話そうとすると身体に拒否反応が出て、
それはきっと、話しては駄目よって、身体が知っているに違いない。
なんて忌々しいの。
吐き出す紫煙が朝靄と同化して、なんて神秘的なんだろう。
煙はゆらゆらと立ち上り、そして空気の中に消えていく。
まるで乱気流の様な激しさと、微風の様な優しさがそこには存在して…。
ねぇ、あたしもいつか、消えてなくなってしまうのかな。
窓の外の薄闇に、ぼんやりと月が浮かぶ。
まるで冷笑を浮かべるそれは、あたしに孤独をもたらす。
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