〜宛メメント 苛立ち ミユウはきっと、苦労してお金を稼いだ事が無いんだろう。 DOLLSではサボってばかり居るのが周知の事実なのに、皆に暗黙の了解とされて居る。 だから、店長や他の重役なんかとデキているらしい、と噂が立つ程だ。 ミユウは何人もの男と付き合って居て、貢がせて居る。 気に入った男はヒモにして飼い慣らして居る。 どこぞのお嬢様だから金には困ってないらしい。 そんな噂は事実かどうかあたしには解からない。 ただ、ミユウは何時も、「それがどうしたの」と言わんばかりの態度に出る。 それらがもし事実だとして、彼女に問い詰めたなら、きっとこう言う。 「何が悪いの?」 「そんなだから貧乏なのよ」 「それ本気?馬鹿じゃないの」 馬鹿なのは、ミユウの方。 だけど、そんな馬鹿に騙される人はもっと馬鹿だ。 結局は、ミユウのような類の人間に、当たり前の事を言っても意味が無いのだ。 そうやって偽善で近付いて行った者を、何人騙して、金と心を吸い上げたのか。 吸い上げて、吸い上げて、吸い尽くしたら、用無しのようにポイ捨てする癖に。 そんな女の本性にも気付かない方もどうかしてる、等と考えながら、ただ只管アパートへ向って歩く。 アパートの近くの馴染みの商店街では、開店と同時にシャッターを上げるおばちゃん達が、威勢良く行き交う人に挨拶を交わして居た。 そんな騒音に紛れながら、あたしは握っていた拳がわなわなと震え出すのを感じると、ぴたっと足を止めた。 ムカつく。 腹立たしい。 今すぐにでも大声で叫びたい。 そして、はっと気付く。 …あたしは何故こんなに腹を立てて居る? ミユウが関与していたにせよ、男と寝るのは珍しい事じゃない。 思っていたより、安く買われた夜もあった。 今回のような事も、何回か経験している。 なのに何故、こんなにも…。 [←][→] [戻る] |