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〜宛メメント
過呼吸

「俺はそーゆーの、嫌いじゃないけどね。」


「え?」


沈黙を破るその言葉は、予想もしない。
思わず聞き返したあたしの頭の中は喜ぶべきなのか、悲しむべきなのか、
見当も付かず黙り込むばかり。

それでもクレドは只、あたしの目を一心に見て、
目を見て、
目を見て、


下を向くしか出来ないあたしは勇気の無い弱いコだ。


「どーしよーも無くなったら俺んトコ来いよ。
その手首の傷も痛みも全部、聞くからさ。」


咄嗟に隠した左手首。

その思いとは裏腹に、クレドへの想いが溢れて居た。

一筋の涙も凍るその瞬間、あたしは自分が泣いている事に気づく。

息が上手く出来ない。
咳が止まらない。

過呼吸が、あたしを襲う。


嗚咽を上げ、大きく咳き込むあたしは今、クレドになんて思われて居る?

差し伸べられた両の腕も、ぼんやりとした残像のようにしか見えなくて。


クレド…クレド……


あたし、クレドが好き…

可笑しいかな?
今日逢っただけで何も知らないのにね。

でももう、可笑しくても無様でも良いや。
拘るのも縛るのもやめにしたいんだよ。


クレド……
クレド……






君は何時でも真剣にあたしと向き合って居たね。

だけどあたしがこんなだから、君を相当困らせただろうね。
自分の考えに異常なまでに固執して硬く心を閉ざして。


ごめんね。

今思えば、何であの時、全部打ち明けなかったのだろうと後悔してる。

君が優しく、手を差し伸べてくれたのに、
あたしはそれを振り切って、君を傷つけてしまったね。


一体何時になったら、上手に相手を違えないで寄り添えるのだろう。

上手に相手を愛する事が出来るのだろう。


未だに解からないよ……


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