〜宛メメント
ナポレオン
グラスの中の氷も、流れる事を忘れた水。
それはそれは孤独感一杯の…あたしに類似して居るわ。
あたしがヘネシー・ナポレオンが好きなのはきっと、
そのネーミングに肖って、英雄から救われたいだけなのかも知れない。
なんて狡猾な女なの…嫌んなる。
クレドはあんなにも純粋なのに。
当のクレドは水割りにギターという、少し妙な組み合わせで独りしゃべって居る。
あたしはクレドの話を聞いているのか自分でも良く解からなかったけれど
適当に相槌を打ちつつ、自分の世界に堕ちてゆく。
「あのさ…」
ギターの話をしていたクレドが重々しく口を開く。
あたしがダークに落ちたせいなのかな、と少し焦りながらクレドの次の言葉を待つ。
「さっきの話、
無理には聞かないけど、どうして誰にも言わねーの?」
突然のその言葉に少しの不快感を覚えつつも、一応の真実を口にする。
「…汚れてるから。」
「ふーん…」
カラカラ…
グラスの氷が泣いて居る。
こんな酷く陰鬱な女に出会ったクレドを想って悲鳴を上げているに違いない。
無理も無い。
先程からのあたしは悲壮感という偏頭痛のような鈍痛に襲われて居た。
だからクレドは楽しい話題で明るくしようと努めて居るのに
あたしは……
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