〜宛メメント
ヘネシー
誰にも見せないのって、嫌にならない?
クレドの言葉が未だに反芻する思考回路は既に狂って居る。
嫌にならない?
嫌にならない?
嫌にならない?
嫌じゃない。
むしろ好都合なのだ。
あたしはもう、元通りの女の子になんかなれやしない。
それは自分と、チョビコが一番良く解かって居る筈だ。
一度汚れた器は、オリジナルには戻れないって事。
必死にイコールノットの方程式を組み上げた刹那、
沈黙を破ったのはクレドの方だった。
「乾杯〜!」
はっと我に返ると傍らにはヘネシー・ナポレオンの豪華なボトルが
威風堂々たる存在感でこちらを凝視して居た。
そして何時の間に持って来たのか、グラスも氷も用意されており、
ナポレオンはあたしのグラスに注がれて居る…
「何でこんな高級なボトルがある訳…?」
「え?だってヘネシー好きっショ?」
「…好きだけど…」
「…ラッキー。好きだったんだ〜じゃ飲も飲も♪」
あー要するに、遊び人なんだ…。
水割り片手にパープルアイを覗かせて、そんな事を思って居た。
カラカラ…。
ヘネシーの僅かな甘みが口の中に浸透していくように
あたしの脳下垂体も同様、クレドに浸透していきそうだ。
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