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〜宛メメント
死気

か細いボディラインを器用に折り畳んで、椅子の上で膝を抱えた。
骨の筋まで滑稽に縁取られた、はだけた背中まである茶色い髪の毛。
あたしは抱えた膝まで額を押し付ける。


肉付きの悪い細い腕を、気力だけで前方に押しやり、手探りでカップを取ろうと試みる。
が、カップの取っ手に恭しくも触れられた指先からは生気も無く、動く気配すら見せない。


今日は午後からバイトが二つも入っていた。
正午からは、原宿の古着屋。
その後は、露出度の高い真っ赤なドレススーツを着込んでコンパニオンだ。


こんな事、してる場合じゃない。
今日はきっとハードなんだから。
奴の事なんて、忘れてしまったのよ…


寝覚めの悪い身体に鞭打つようにして立ち上がる。
キャミソールと短パンだけ身に付けた体は、色気というより死気の方が勝っていた。
身体に残る幾つもの赤い傷跡。紫の痣。太股と背中の刺青。
細い体はいつ死んでも可笑しくないとでも主張するかのようだった。


カップの取っ手に触れた手に勢い良く力を込める。
コーヒーを一気に飲み干しながら、あたしはクレドの事をようやく思い出した。




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