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〜宛メメント
月明かり

「…あたしはチョビコだから……」


凍りつくような沈黙が部屋を流れる。


ゆらゆら

ゆらゆら


月明かりがやけに目障りだ。
この部屋の何もかもを、その明媚な魅力で包んでしまうのだから。


「…俺もなんだよな。」


沈黙を破ったその言葉はどこか寂しげで。
今思えばクレドらしくなかった。


「神が居るならせめて、人間じゃないものでココに居たかったな。」


「…そうだね」


そう、例えば無機質なバイク…
感情なんて要らない、無機質な機械になりたい。


あたしには、誰にも打ち明けられない秘密があって、
クレドもきっと、同じ。

どうして人間は、こうも不器用なんだろう。
愛の無いセックスに身を委ね、愛の言葉は毛嫌いする。

それはきっと、あたしの自己防衛反応だ。


独りで居るのが心地良くて仕様が無い。
誰かとこうして関わって居る事がこの上なく面倒で、
孤独も寂しさも「忙しさ」で紛らわして居る。

そんなの、すり替えだって事も知って居る。
けれど「みんなどこかでそうだよ」って言い聞かせ、
自分の弱い部分は決して表には出さない。


寂しさや孤独を打ち明けられる人が傍に居る事は、それだけで幸せだ。
きっとあたしには勇気が無い。
打ち明けようとする勇気と、そういう人を作る勇気が。

自分だけじゃなく、皆、苦しいし、辛いし、怖いんだろう。
でも大人は助けてくれない。他人の事は深入りしない。
それが一番楽だと悟って居るから。
だからあたしは、耳を塞ぐ事しか出来ない。

現実は重く、冷たく、脆く、そして信じ切れない。


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あきゅろす。
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