〜宛メメント 罠 エレベーターで5階へ昇り、6号のドアをノックすると、 如何にも偉そうな雰囲気を醸し出した中年の男が出迎えた。 多分、政財界か財閥の人だ。 着込んでいるスーツや身に付けている時計やアクセサリーが、一般人とは違う。 何故そんな金持ちが、こんなラブホなんだろう、と疑問に思ったが、 それはミユウの猫撫で声に掻き消された。 「遅くなってごめんなさい。 あたしがミユウ、こっちがサチコ。 二人で来たから、奮発してよねぇ〜」 言いながら、勝手につかつか入って行くミユウにかなりの違和感を覚える。 「サチコ、 先に先生とお風呂に入って来て」 部屋に入るなり、ミユウはブランデーを作りながら、小声で言った。 こういう時のミユウは積極的だ。 仕事でもそれを生かせばいいのに、とか余計な事を思ってしまう。 が、あたしはその行動と今の言葉を合致して、すぐさま脳裏にある答えが導き出された。 ああ… そういう事か。 この女、 あたしをハメようとしてる…。 [←] [戻る] |