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〜宛メメント
ユヅキ

わざと、だ。

ブラック・デス・ジンでギムレットを作っているのは、きっと無意識の内にわざとやっているのだ。

もしも…
クレドがもしも、
会いに来てくれたら…


「覚えててくれた?嬉しー!」
とか言ってまた…
昔みたいに…って。


そんなの、馬鹿な妄想だって解かってる。
でも、あたしは…君に、君を…


「…ねぇ。
俺、ユヅキっていうんだけど。
今度又、君のギムレット、飲みに来ていい?」


グラスを拭く手に力が篭った。
ユヅキが、真っ直ぐあたしを見て居る。


今にも泣きそうな、あたしを。


「…はい。」


無愛想に一言だけ返事をすると、ユヅキは会計を済ませ、早々に帰って行った。

一杯のギムレットを飲んだだけなのに、あたしの心の中は少しだけ、満たされて居た。


「ねぇねぇ〜
あの人カッコ良くない〜?
あたしタイプかも。狙っちゃっていい?」


穏やかな心持の最中に、ミユウはドタバタと土足で上がりこんで来る。

こういう時のミユウは、蛇の目ではなく、猫の目。
あからさまに違うその態度にあたしは又、苛立ちながら目も合わせずに返事をした。


「別にあたしは…関係ないし。」


「そ。じゃあ手、出さないでね?」


ミユウのその言葉に、一瞬時が止まった。
女に好かれないのは、幼い時からだ。

大丈夫。
慣れて居る。

あたしは、そんなに弱いコじゃないんだから。



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あきゅろす。
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